第113話 音を斬る
氷猿を倒した私は、古竜を連れて東へと進んでいく。
「ううぅ……さみぃ~……」
古竜が肌をさすっている。
まったく。
「
「つってもよぉ……
古竜の体からは大量の
「それは
「とどめるっつっても……どうするんだよ……」
「自分の体を薄いラップで覆うような感じですね」
「らっぷ……?」
古竜は地球人じゃないので、私のたとえ話を理解できていないようだ。
「薄氷で体を覆うみたいな感じです」
「うーん……わかるようなわからないような……」
と、そのときである。
ーーオアォオオオオオオオオオオオオオオオオオオン……。
「なんだ? 犬の遠吠え……が……」
がきぃん! と一瞬で古竜の体が凍り付く。
そして次の瞬間には、ぱきぃん! と粉々に砕け散った。
「…………」
私は白色闘気をすぐさま古竜に付与。
砕け散った細胞達が、元通りに治っていく。
「な、な!? え、え!? な。何が起きて……? え?」
ーーアオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
がきぃん!
ぱきぃん!
またも古竜が砕け散ったので、
「ちょ!? マジで何!? 何が起きてるンのさっきからよぉ!」
「どうやら我々は攻撃を受けているようですね」
「我々っつーかおれひとりだけど……って、攻撃?」
がきん!
ぱきぃん!
「ええ」
ぽんっ。
「攻撃どっから……? つーかこれいったい……」
がきん!
ぱきぃん!
ぽんっ。
「おそらくは音に藍色の
がきんぱきんぽんっ!
「載せてるのでしょうね」
がぱぽっ!
「さっきからおれどんだけ死ぬの!? てゆーか、がぱぽってなんだよ!?」
がぱぽっ!
「あなたがさっきから氷、砕け散って、そして私が戻してるのです」
それを省略した形だ。
「なんとかしてくれ! おっさん!」
遠吠えのするほうがくに敵が居るのは確実だろう。
問題は敵にどう接近するかだ。
間違いなく近づけば凍ってしまうだろうし。
「どうやらあの音を聞いたものは氷付けになってしまうようです」
「でもおっさんはさっきから無事じゃないか」
「私も凍ってますが、その瞬間に
技量不足の古竜ではできないだろうけれども。
ふむ……。
「近づけば音も大きくなるし。音なんて防ぎようもないし。どうすりゃ……」
「え?」
「え?」
「え?」
「あ、うん。いってらっしゃい、おっさん」
私は普通に、遠吠えのした方角へと向かう。
ーーアォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
遠吠えが聞こえてくる。
私は木刀を振り上げて、下ろす。
パァンッ……!
「お、音がおくれて聞こえてきた!? なにいまの!?」
「ただ音を木刀で切っただけですよ」
「音を斬ったぁ……!?」
「ええ」
「いや無理だろ!? 目に見えないんだぞ!?」
目で見えなくとも、たとえば地面。
今は雪で覆われている。
だから音の衝撃波がくれば、地面に後ができる。
そうすれば、なんとなく攻撃が来るタイミングがつかめるのだ。
音攻撃が来たら、それを着る。ただそれだけ。
「さ、あとは仕留めるだけですね」
「あいっかわらずあんたやべえな……」
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