第107話 姐さんエルザ



 天王剣を使い、転移門ゲートを作成する。

 ネログーマから、守護神のひとり、治癒神エルザが様子を見に来た。


「アル、無事で何よりよ」

「エルザ。久しぶりですね」


 と言っても一日も経っていないのだが。

 もうすでに、何日も彼女に会っていないような感じがした。


 エルザは私に抱きついて熱烈なキスをする。

「おーおー……おあついこったね……」


 人間姿の古竜があきれたようにつぶやく。


「……あなたそれ、何やってるの、古竜?」


 古竜は首から下が氷付けになっている状態だ。


「そこのおっさんから拷問を受けた……」

「おや、おや。心外ですね。ただの訓練ですよ」


 くすん、と古竜が鼻を鳴らす。


「エルザの姐さん……このおっさんどうにかしてくれ……おれもう……限界……喉……えほえほ」


 エルザが古竜を閉じ込める氷を見て、はぁ……とため息をつく。


「アル……この氷の結界、かなりの強度よ」

「ほらぁあああああああああああああああああああ!」


 おやおや。

 そんなに強度あるのか、これは?


「けれど私はにらむだけで壊せますよ?」

「それは……あなたが異常なだけよ……」

「ほらぁああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 おやおや。


「具体的に、どれくらいの強度があるのですか?」

「そうね……最強生物こりゅうを完全に閉じ込めるくらいの強度はあるわね」


「? ではたいしたことないじゃないですか」

「古竜は最強生物だっつってんじゃないかよぉおおおおおおおおお!」


 この子が最強……?

 疑わしい。


「姐さーん、たすけてぇ~」

「と言っても古竜を閉じ込めるほどの強度の氷だから、今まで以上の力を発揮するしかないわね」


「どうすりゃいいの~?」

「……元の竜の姿に戻るのは、どう?」

「あ」


 ぼんっ! と古竜が元の竜の姿に戻った。

 その衝撃で、氷の結界がとけた。


『うぉーーーーー! 結界が破れた-! 姐さんのおかげだよぉう! ありがとぉおおおおおおおおおおおお!』


 すりすり、と古竜が長い顔をエルザにすりすりする。


「あなた……喉痛いんじゃなかったの?」

『えほえほ……! そうだった……叫びすぎた……』


「はい、魔法薬」


 エルザが魔法バッグからポーション瓶を取り出し、蓋を開けて、中身を古竜に飲ませる。

『あーあー、喉痛くなかったぜぇ! ありがとう、エルザの姐さん!』

「どういたしまして……。じゃ、アルのことおねがいね」

『ええええええ!? ちょ、どこにいくんすですかぁ!?』


「ネログーマに戻るのよ。アルの様子を、ハーレムメンバーを代表して見に来ただけだし」


 皆さんに心配させてしまっているようだ。

 速く問題を解決して帰らないと。


『待って! 帰らないで! おれひとりでこのおっさんツッコむの無理!』

「……頑張れ三下こりゅうくん」


『三下ってかいて古竜って読まないでぇええええええ!』


 結局エルザは帰って行った。

 皆には今日あったことを共有しておくと言っていた。ありがたい。


 さて、では心置きなく、敵陣へ向かいましょうか。

 

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