第108話 出発



 さて、氷鬼の居場所へと行くことになったのだが。

 行く前に情報を整理しておかないと。


 ドワーフのガンコジーさん、そして街長のドワーフさんと、私は話をする。


 食堂にて。


「魔神が封印されている場所はどこにあるのですか?」

 

 カイ・パゴスを襲った氷鬼は、魔神の封印を解いて、その力を我が物にしようとしてるそうだ。


「ここ、ニサラキから東へ行った場所、王都ウフコという場所に、魔神の封印されている神殿があります」


 街長が地図を広げて指さす。

 私達がいるのは西側の街、ニサラキ。


 ここからまっすぐに行った先にある場所が王都らしい。


「徒歩だとどれくらいですか?」

「雪に足を取られるので、3日はかかります。馬車だと1日かと」


 ふむ……。


「飛んでいけばもっと速くつけそうですね」


 ちら、と私は古竜を見やる。

 古竜は食堂にしつらえてあった、ストーブの前で震えていた。


「おれは嫌だぜ。外は吹雪じゃねえか!」


 そう、到着したときはさほどだったのだが、今は外は猛吹雪だ。


「普段から、この国は吹雪いております」

「そんな吹雪のなかとんだら風邪ひいちまうよ! だから……却下!」


 ふむ。一理ある。


「そうですね」

「え!? そんな……おっさんなら、この吹雪の中も飛べって言うんじゃないかって思ってたんだけど……」


「私をなんだと思ってるのですか?」

「鬼、悪魔、鬼畜」


 おやおや……心外ですね。

 優しくしてるつもりなのですが。


「飛んでいけないとなると、歩きですね。善は急げです。参りましょうか」


 私が立ち上がる。

 

「じゃーね、おっさん。いってらっしゃい」

「おや? ついてこないのですか? 古竜」


「乗り物としての価値がないんだから、連れてく必要なくない?」

「まあそうですね」


「即答されるとなんかむかつくっ! 事実だけどさぁ!」


 しかし……ふぅむ。

 この子、思ったより弱い。今回の敵は……修行にちょうど良いかもしれない。


「古竜。ついてきなさい。修行です」

「えええええええええええええええええええええええええええええええ! やだやだやだ! 何で修行なんてするんだよ!」


「強くなるためです」

「いいよ! 強くならなくて!」

「駄目です。強い敵が現れたらどうするんですか?」

「おっさんがいれば問題ないだろ!」


 おやおや。


「確かにわたしが居れば問題に対処はできます。が、居ないときに強敵と会ったらどうするんですか?」


 現に、この子は氷鷲とであったときに、殺されかけていた。


「ということで、修行をかねて行きますよ」

「いやじゃぁ! ここでぬくぬくストーブに当たってたいぃいいい!」


「駄目。ほら、いきますよ」


 私は古竜の首根っこをつかんで外に出る。


「わしもお供するのじゃ!」


 とガンコジーさん。


「いえ、危険ですのでここで待っていてください」

「扱いの差ぁ……!」


 ガンコジーさんは戦闘員じゃないのだ。当然の扱いである。



「つーか、敵がまたここ襲ってくるかもしんねーじゃん。そんとき、戦えるやつがいたほうがいいんじゃないの?」


 む?


「……確かにそれには一理りますね」

「でしょ!? はいじゃあおれも残る! はいけってー!」


 やれやれ。良い修行の機会だと思ったのですがね。


「では、後は任せますよ古竜」

「あいあい~! はー! やっと変なおっさんのツッコミ係から解放されるぜぇい!」 


 がちゃり、と扉を開けると……。


「副王さま!」「おひさしぶりっす!」


 おやおや。

 トイプちゃんに、ワンタ君ではないですか。

「どうしました、二人とも?」

「エルザ様から、ここを守護するようにと派遣されまして! 転移門ゲートをくぐってやってきたのです!」


 なるほど、エルザはこの場を敵がまた襲うかもしれない、と考えて兵士を送ってくれたみたいだ。


「ありがとう。二人とも。では、任せますね」

「「はいっ!」」


 そろーり、と逃げようとした古竜の首根っこをつかむ。


「ひっ!」

「さ、いきますよ」

「いやぁああああああ! 助けてぇええええええええ! 殺されるぅうううううううううううううううううう!」


 おやおや何を言ってるのでしょうね。


「殺されたら、生き返らせてあげますから」

「いやぁもぉおおおおおお! おれをこの役割から誰か解放してくれよぉおおおおおおおおおおおおお!」

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