第86話 ドワーフの国へ



 ゲータ・ニィガ国王が学校を建ててくれることになった。

 資金は全額、ゲータ・ニィガ持ちだそうだ。ありがたいことである。


 さて。

 場所はゲータ・ニィガとネログーマの国境付近の草原。


「よぉうし! やるぞぉ!」


 ガンコジーさんが張り切ってそういう。


「副王の学校だ! 世界一の剣術学校にせねばな!」


 ふがふが、とガンコジーさんが鼻息を荒くして言う。


「なんでこのじーさん張り切ってんの?」


 と古竜さん。


「ガンコジーさんが指揮を執ってくださるそうなんです」

「鍛治師なのに?」


 おう! とガンコジーさんがうなずく。


「わしは剣作りだけでなく、建築の知識と技術もあるのじゃ」

「へー、さすがドワーフ。物作りならなんでもござれってか」


 古竜が言うと、ガンコジーさんがうなずく。

「わしが指揮を執るだけじゃない。祖国から腕利きのドワーフ職人たちが来てくれることになったぞ!」

「それはとてもありがたいです」

 

 祖国というと、南西にあるドワーフの国、カイ・パゴスだろう。

 あそこの職人たちは皆腕利きだと聞く。


「凄腕職人たちを呼んでも大丈夫なのかよ? カイ・パゴスからここまでって結構遠いし。いろいろ金かかるんじゃないの?」


 古竜が至極もっともな発言をする。


「問題ない! 費用はゲータ・ニィガ持ちじゃからのぅ!」


 しかし……ふぅむ。だとしても、相当な金額になることは容易に想像できる。

 いくら出資してもらえるからといってもなぁ。


 ……ふむ。よし。


「古竜、出かけますよ」

「え? どこに?」

「カイ・パゴス」

「はぁ!? なんで!?」


 私は古竜に説明する。


「カイ・パゴスへ赴き、職人達を連れてきます。船で呼び出すとなると、輸送費がかかりますからね。ですが、私が言って彼らを転移させれば、一瞬です」


 こうすれば、ゲータ・ニィガに余計なお金を出させなくてすむ。


「なるほどのぅ。あいわかった。ではわしもついて行くぞ!」

「いいのですか、ガンコジーさん?」


「おうよ! 副王はカイ・パゴスに行ったことないんだろう? 案内してやるぞ!」

「それは助かります」


 あのぉ、と古竜が手を上げる。


「なんでおれが?」

「我々を運ぶ足になってほしいのです。古竜の翼なら、カイ・パゴスまでひとっ飛びでしょう?」


「いやまあそうなんだけど……。おれ、古竜なんですけど……なんでそんなぱしりみたいなまね……」


 ちゃきっ。


「喜んでぱしりさせてもらいまぁあああああああああああああす!」


 かくして、私はガンコジーさんと古竜とともに、カイ・パゴスへと向かうことになったのだった。

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