第84話 古竜を国王に謝罪させる
あくる日、王都エヴァシマに来客があった。
同盟国ゲータ・ニィガから、国王がやってきたのである。
謁見の間にて。
「パパ! ひさしぶりね!」
私の妻にして、ゲータ・ニィガ王女のスカーレットが、国王を出迎える。
国王は微笑むと、娘の頭を撫でる。
「久しぶりだなスカーレット。元気そうで何よりだ」
「うん! 元気よ元気! 毎晩アレクに可愛がってもらっているわ! 元気な赤ん坊がうまれるのも、時間の問題ねっ」
確かに毎晩のように、スカーレット姫は私に抱かれにくる。
王族としての義務……というより、私との行為を楽しんでいる。
そして、私の子をなすことを喜んでくれてるのが伝わってくるのだ。
「そうか。それは楽しみだ。有能で優秀なアレクサンダー殿との子ならば、優秀な子供になるだろうからな」
「当然よ! 生まれ来る子が女だろうと男だろうと、世界一凄いアレクの遺伝子を継いでるんだもの! 明るい未来が確約された、将来有望な子が生まれてくるに決まってるわ!」
さて、と王が話を切り出す。
「今日ここに来たのは他でもない。アレクサンダー殿。こたびは、古竜の脅威から、我らを救ってくださったこと、誠に感謝申し上げる」
古竜の……脅威?
はて?
「古竜の脅威なんてありましたか?」
「あったじゃないのよ。ほら、最近ハーレム入りしたあいつを、アレクたちがボコボコにしたでしょう?」
あー……。
あれのことか。
しかし、おや、おや。
あんなのが脅威だったなんて。
「わざわざ感謝しにきてくださって、ありがとうございます。ですが、あれは私というより、わが国の兵士たちが対処してくれましたので。感謝の言葉は兵士達にあげてください」
すると国王がきょとんとした顔になる。
おやおや。どうしたのだろう。
「聞き間違えだろうか……? 兵士達が、古竜を対処したと? やっつけたのか?」
「はい。まあ、殺しはしてないですが」
「殺してない……?」
「ええ。竜は倒さず、私の従魔にしました」
私は窓の外に向かって言う。
「隠れてないで出てきなさい」
窓から一人の美女が飛び降りてきた。
灰色髪に、竜の角と尻尾を生やした女。
「そのときの古竜です」
「どーも……あんときボコボコにされた古竜です……」
苦い顔をして古竜が言う。
トイプちゃん達にボコられたときを思い出しているのだろう。
「信じられん……アレクサンダー殿は、古竜を従魔にしたと!?」
「はい。なので、もう彼女が貴国に迷惑をかけることはありません。そうですね、古竜?」
古竜は「へいへい。さーせんした」と失礼な態度を取る。
ふむ……。
「オシオキが必要ですかね……」
「ひぎぃいい! ちゃんと謝りますぅうう!」
古竜はその場で四つん這いになり、頭を深々と下げる。
「このたびはゲータ・ニィガの皆さんに迷惑をおかけして、たいっへん! 申し訳ありませんでしたぁ!」
よしよし、ちゃんと謝れて偉い。
すると国王は目をむいて、呆然とつぶやく。
「古竜を完全に従えている……。やはり、アレクサンダー殿は……すごいな……」
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