おっさん剣聖、獣の国でスローライフを送る~弟子に婚約者と道場を奪われ追放された俺、獣人国王女に拾われ剣術の先生となる。実は俺が世界最強の剣士だったと判明するが、泣いて謝っても今更戻る気はない
第83話 古竜、強くなるが剣聖の弟子にボコられる
第83話 古竜、強くなるが剣聖の弟子にボコられる
古竜が仲間になった。
訓練場にて。
「おいおいおいおい、こいつはどうなってんだよ!」
古竜(人間体)が、訓練場の【それ】を見て驚きの声を上げる。
「どうかしましたか?」
「いや、なんでミスリルのでっけえ塊が、こんなとこにあるんだよ!」
訓練場の地面からは、ミスリルの柱が何本も生えているのだ。
「ミスリルというと、めちゃくちゃ希少な鉱物じゃあないか! それがどうしてこんなとこに!?」
「これは、訓練用です」
「訓練用? 意味わからないんだけど……?」
すると兵士達が、ミスリルの柱の前に立つ。
剣を構える。
「何やってんのこいつら?」
「今から打ち込みの稽古を行います。はじめ!」
トイプちゃん達が剣を抜いて、ミスリルの柱めがけて、剣を振り下ろす。
「「「やっ……!」」」
ザシュッ……!
「ええええええええええええええええええええええええええ!? ミスリルぶった切ったぁ!?」
折れたミスリルの柱を前にして、古竜が驚く。
「せい!」「でや!」「ちぇええい!」
すぱっ!
すぱっ!
すぱんっ!
「なんだこいつら! やばすぎんだろ! ミスリルを何軽々と斬ってるんだよ!? 古竜の爪でさえも、ミスリルを傷つけることができないんだぞ!?」
おや、そうだったのか……?
「モノを斬る極意、あるいは、
「できないよ!!!!!!!!!!!」
「できますよ。ほら、あなたもちょっと訓練してみませんか?」
ぐいぐい、と私は古竜の背中を押す。
「いや、おれは訓練とかいいよ……」
「駄目です。この国に置いてあげる以上、貴女にも働いてもらいます。現状では、あなたはかなり弱い。強くなってもらわないと」
「いや弱くないんだけど!? 古竜って魔物の頂点なんだけど!?」
するとリルちゃんがとことこ、と古竜のそばまでやってくる。
「きゅ? あなたは、ぱぱのいうこと聞かない子……? 悪い子……?」
ぐっ、とリルちゃんが拳を握りしめながら言う。
「ひぐううううう! 言うこと聞きますしゅゅううう! だから殺さないでぇええええええええええ!」
幼い子を前に、情けなくガタガタと震える古竜。
こんな情けない子が魔物の頂点なわけがない。
「おっさんあんたわかってないよ……そこのドラゴンのやばさが……」
「わかってますよ」
「ほんとに……?」
「ええ、ヤバいくらい可愛いですね」
「やっぱりわかってないじゃないか!!!!」
リルちゃんが「んー。んー」と私に向かって両手を伸ばしてきた。
私はリルちゃんを抱っこしてあげる。
「さ、古竜さん。ミスリルの柱を切ってみてください」
「いやあのさおっさん……ミスリルって、そんな簡単に斬れるもんじゃあないんだよ……?」
「斬れます。兵士達も斬れてたでしょう、全員」
「ここの兵士が全員イカレテんだよ!」
「さぁ、早く」
ぐぬぬ! と歯ぎしりする古竜。
「なんで魔物の頂点たる古竜がこんな矮小な存在の言うことを……」
「こぶし?」
「やりまーす!」
リルちゃんに怯える古竜。
こんな小さな子にも怯えてしまうだなんて。やっぱり、鍛えてあげないとですね。
「くっそ……絶対ミスリルなんて壊れないよ……怪我しないように手ぇ抜いてやるか……」
古竜さんは右手を前に出す。
手で主塔を作ると……。
「ちぇすとぉおおおおおおおおおお!」
古竜さんの手刀がミスリルの柱にぶつかる。
スッパァアアアアアアアアアアアアン!
「うぇえええええええええええええええええええええええええ!? うそぉおおおおおおおおおおおおおおお!?」
おや、おや。
「なんだ、ミスリル斬れるじゃないですか」
できないって散々言っていたのに。
「いやいやいや! 斬れないって!」
「斬れてるじゃないですか」
「そうだけどもっ! あんれぇえ!? おかしいな……なんでこんな簡単に斬れるようになってんだ……?」
小首をかしげながら、古竜がもう一度手刀を繰り出す。
しゅぱんっ!
すぱんっ!
ずばぁあああああああああああん!
「やっぱりだ! おれ……なんか強くなってる! これか……この、体を覆う、光! こいつのせいで強くなってるんだなっ!」
がははは! と古竜が笑う。
「それは
「なるほどぉ! いつの間にこんなの身につけたのかさっぱりわからねえが! いいもん手に入れたぜぇ!」
にやぁ……と古竜が笑う。
「この力さえあれば! ここの連中に復讐でこいるってぇこったなぁ! さっきぼっこぼこにしくさったお礼に、今度はこっちがぼっこぼこにしてやんよぉお!」
たんっ!
と古竜が地面を蹴って、兵士達の元へ向かう。
おや、おや。
対人稽古ですか。いいことです。
「まずは女ぁ……! てめえからだぁ……!」
古竜が向かった先にいるのは、トイプちゃん。
「トイプちゃん。相手してあげなさい」
「はーい! 副王様っ! よーし、いくわよぉ!」
トイプちゃんの体から黄金の
「ちょ、え?」
「だぁ……!」
トイプちゃんがハイミスリルの剣で、思い切り胴を食らわせる。
「ぶべぇあぁああああああああああああああああああああああ!」
古竜は体を【く】の字にまげると、空へとぶっとんでいく。
「まだまだぁ……!」
たんっ! とトイプちゃんが地面を蹴って跳ぶ。
ぶっ飛んでいく古竜を先回りして……。
「ずぇええええええええええええええええええええええええ!」
今度は上段から、古竜の脳天に一撃を食らわせる。
ばごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!
「おげぇええええええええええええええええええええええ!」
古竜が地面に激突し、バウンドしたところに……。
「おりゃりゃりゃりゃりゃ!」
どごばごぐしゃ!
極光兼奥義。【六花斬】一秒で六連撃を与える奥義だ。
古竜はボコボコにされて、その場に倒れ伏す。
「ふむ、トイプちゃん。そこまでにしておきましょう」
「押忍! ありがとうございました!」
ぺこっ、とトイプちゃんが頭を下げる。
倒れてる古竜のそばによって、私は肩に手を置き、白色闘気を流す。
「かはっ! はぁ……はぁ……な、なんなんだ……なんなんだよあれはよぉ!」
がたがたがた、と震えながら、古竜が尋ねてくる。
「トイプちゃんですよ。ほら、あなたもドラゴン姿のときに戦ったじゃないですか」
「そうか! こいつ、おれの足をぶった切ったバケモノか!!!!!!!!!!!」
バケモノとは失礼な人だ。
「ここ……ミスリル・ドラゴンだけじゃねえ……バケモノの巣窟だ! おれはとんでもないとこにきちまったぁ……!」
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