第61話 すごい居合で崩落を回避



 私はリルちゃんと契約した。

 何はともあれ、これで一件落着だ。


「んじゃ、ま、かえろーぜ先生」

「そうですね……」


 と、そのときだった。

 ……私は闘気のゆらぎを感知する。闘気のゆらぎは心のゆらぎ。


 私は確かに、悪意の感情を感知したのだ。

 それが意味するところはつまり……。


 ぴき! ばき!


 皆が目を丸くしてる。

 私はファルを抜いて構える。


 天井にひびが入り、そして……。

 ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオン!


「んな!?」「天井が崩れ……きゃぁあああああああああ!」


 突如として鉱山の天井が崩れ、落ちてきたのだ。

 先ほどの悪意は私達を生き埋めにしようという悪意だったのだろう。


 バーマンは驚いているためか、少しでおくれている。

 エルザは武人ではないためか、その場で動けないで居る。

 リルちゃんは子供。避けることはできないだろう。


 このままでは全員生き埋めになってしまう。

 だからこそ、私は冷静に、事態に対処する。


「極光剣……」


 ドゴゴゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオオン!


 激しい轟音はすぐにやむ。


「あ、あれ……? あ、あたしら……い、生きてる……? なんで……?」


 空を見上げると、太陽がのいていた。キラキラと日の光が照りつける中、バーマンが呆然としてる。

 エルザもまた何が起きてるのかわからない様子で、周りを見渡す。


「怪我はありませんか?」

「え、ええ……アル。何が起きたの……?」

「崩落してきた岩石を、すべて斬ったのですよ」

「!? ぜ、全部斬った!? あの一瞬で? 落ちてきた岩全部を!?」


 私達の周囲には多くの岩石が転がっている。

 そんな中、私を中心とした円形のフィールドの中には、岩が一つも見当たらない。


「極光剣。【夜凪】。私の剣が届く範囲に入ったモノを、オートで、すべてを斬り消し飛ばす奥義です」

「す、すべて……?」


「ええ、すべてです」


 夜凪はかぜ、そしていかずちの色の闘気を混ぜ、体の反応速度を極限まで速める。そして張った衝気円内に入ったモノを自動迎撃するように、プログラムしておく。


 そうすることで、私の思考速度を超える速さでの迎撃が可能となるのだ。


「久しぶりにみたけどよぉ、先生の衝気円からの居合いはマジ一流ですぜ! さすが先生!」

「それにしても……誰がこんなことを……」


「誰? え、事故じゃ無いんですか?」

「ええ。誰かしらからの悪意を感じました」


 バーマンが「はえー、気づかなかった。さすがだぜ先生」と感心している。

 一方エルザは少し考えて言う。


「ミスリル・ドラゴンに呪いをかけた人物かもね。呪いが解いた瞬間、ドラゴンの命を消すつもりだったのかも」

「まじかよ! なんでそんなことを?」


「証拠隠滅、でしょうね」


 私も同意見だ。

 リルちゃんは呪いをかけた人物の顔を知ってる。それを周りに知られたくないから、リルちゃんを消そうとしたのだろう。


 ……何というやつだ。

 許せない。


「ぱぱ……」


 裸身の幼女、リルちゃんが不安げに私を見上げてくる。

 私はリルちゃんの頭をなでる。


「大丈夫。さ、家に帰りましょう」

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