第60話 魔力量もすごかった



 ……従魔契約をリルちゃんと結んだ結果、リルちゃんが女の子になってしまった。

 おや、おや。これは、どういうことだろうか……?


「ぱぱぁ~♡」


 リルちゃんは私に抱きついて、ちゅっちゅ、とキスをしてくる。

 なんだか子犬にじゃれつかれてるようで可愛いな。


「おいおいエルザ、こりゃあいったい全体どーゆーこったよ!?」


 バーマンがエルザに尋ねる。確かに私も疑問に思っていたところだ。


「従魔契約に、従魔を人間にする効果なんてなかったはずだわ……」

「でも、事実ミスリルドラゴンは人間になってるじゃねえか」

「そうなのよね……私にもわからないわ……。ただ、こんな事例は前代未聞だってことだけは確か」


 長い年月生きていて、知識量の豊富なエルザでも、リルちゃんが人間になったのはイレギュラーな事態らしい。


「いや……待って。従魔契約で人間に……まさか……いや、そんな。あり得ない……」

「どうしたのですか? なにか、心当たりのある事象が?」

「ええ……。従魔契約によって、従魔と人間の間には、魔力経路パスがつながれることになるの」

魔力経路パス?」


「文字通り、魔力の通り道ね。魔力経路パスを通して、主人は従魔に魔力を供給することになってるの」


 なるほど。

 従魔契約とは、モンスターと契約することで護衛役を得るかわり、魔物は人間から魔力をもらう、という契約なのか。いちおう、ギブアンドテイクになってるわけだ。


「アル……あなた、魔力量ってはかったことある?」

「いえ、ありませんね」


 こちらに来て、物心ついたときから、私は剣士であるアーサー氏のもとで修行をしていた。

 魔法を学ぶ機会はなく、当然、魔力量を量ったことはない。


「……アル。ちょっと魔力を測らせてもらうわね」


 言って、エルザは懐から片目がねを取り出す。


「なんだよそれ?」


 とバーマンがエルザに尋ねる。


「簡易版の、魔力測定器よ。これで体内の魔力量を量れるの。簡易とはいえ、エルフの魔力量も量れるわ」


 レンズがキラリと光る。


「バーマン……魔力量5。ゴミね」

「んだとてめえ!」


「まあ、獣人って魔力量が低いからこんなものよ」

「あそ……。エルフはどんなもんよ?」

「53万くらいね」

「やばっ! で、先生は……?」


 バーマンが私を見やる。すると……。

 ボォンッ……!


「魔力測定器がぶっ壊れた!?」

「エルフを超える魔力量ってことね……」 


 おや、つまり、私ははかっていなかっただけで、魔力量はかなりあったと言うことか?


「アル、あなたはとんでもない魔力量も秘めていたのよ。従魔と魔力経路パスをつないだことで、従魔は大量の魔力を得て、結果魔物は存在進化したってことよ」


 魔物は一度に一気に魔力を摂取すると、存在が進化する。

 これを存在進化という。


「先生は闘気量だけじゃなく、魔力量もすごかったってことだな! さすが先生! すごいです!」

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