第58話 ドラゴンゾンビを元に戻す
ミスリル・ドラゴンを麻痺させ、動けなくした私。
「先生……これからどうするんだい?」
「……このドラゴンを倒せば依頼達成だけども。アルは……倒さないのよね?」
エルザは付き合いが長いからか、私がしたいことを、理解してくれてるようだ。
「ええ。私はこの子を、元に戻したいと思ってます」
「も、元に戻すっつってもよぉ、先生。そいつ……死んでるんだろ?」
バーマンがドラゴンゾンビを指さす。
「エルザでも蘇生は無理なんだろ?」
「……そうね。私でも、死んで時間がたってしまってるこの子を、生き返らせることはおろか、元のミスリル・ドラゴンに戻すのは不可能ね」
治癒神ですら、この子を元に戻せないという。
だが私は、だからといって諦める気は毛頭なかった。
「ファル。力を貸してください」
『もちろんじゃー!』
私は鞘に収まってる聖剣ファルシオンを抜いて、構える。
「……そういえば、アルって黄金の型で死者を蘇らせることができたんだったわね」
「でも先生。それって死んですぐのやつしか生き返らせられないんじゃ?」
そのとおりだ。
私が蘇生できるのは、死んだ直後、まだ魂が肉体から抜けてすぐの死体だけだった。
……今までは、だ。
「私はどうやら以前より、多少強くなったようです」
「「多少って……」」
「ならば、今まで引き出せていなかった、聖剣ファルシオンの力を、もっと引き出せるかもしれない」
私は刃に黄金の闘気を付与する。
「極光剣。黄金の型……【黄泉がえり】……いや、【
私の目には、ドラゴン・ゾンビの近くにいる、この竜の魂が見えた。
魂状態の竜は鎖で縛られている。
そしてその鎖の先には、地獄の鬼どもがいて、あの世へと連れて行こうとしている。
私の剣は地獄の鬼どもの首を切り飛ばす。
鬼たちは消滅。
そして竜の魂を縛っていた鎖も消えた。
瞬間、竜の体が強く光り出す。
そしてそこにいたのは……。
「な……なんて綺麗なドラゴンなんだ」
「……信じられないわ。ドラゴン・ゾンビが、元のミスリル・ドラゴンに戻っている!」
一匹の美しい竜がそこにいた。
青みがかった銀のうろこで覆われた、とても、とても綺麗なドラゴンだ。
この子がミスリル・ドラゴンだろう。
『さすがあれくじゃ! 死者を蘇生させただけでなく、死者の肉体を縛っていた呪いすらも断ち切ってしまったのじゃ!』
元通りになったミスリル・ドラゴンは、目をむいているようすだ。
私はミスリル・ドラゴンの頬に手を触れる。
「もう大丈夫ですよ」
『きゅぅ……ありがとう……♡ ちゅき……♡』
ちゅっ、とミスリル・ドラゴンが私にキスをしてきた。
びきっ、とバーマンとエルザの額に、怒りマークが浮かんでいた。
「もう、なのか?」
「また、なのね?」
何のこと言ってるんだろうか二人とも……。
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