おっさん剣聖、獣の国でスローライフを送る~弟子に婚約者と道場を奪われ追放された俺、獣人国王女に拾われ剣術の先生となる。実は俺が世界最強の剣士だったと判明するが、泣いて謝っても今更戻る気はない
第55話 二十四時間365日闘気纏うのって普通よね?
第55話 二十四時間365日闘気纏うのって普通よね?
鉱山作業員さんは、私の作った料理を食べて元気になった。
「ありがとうございます、なんとお礼を申し上げてよいやら……」
現場リーダーさんが何度も、気の毒になるくらい、頭を下げてきた。
「まさかネログーマ副王様とは知らず……ご無礼な態度を」
「気にしないでください。こちらが名乗らなかったのが悪いのですから」
「ああ、なんとおやさしい御方だ……ありがとうございます……」
「それで、リーダーさん。何があったのかお聞かせくださいますか?」
リーダーさんは私に説明する。
「我々が作業してる鉱山に、【魔銀竜】が住み着いてしまったのです」
「まぎんりゅう……?」
なんだろう、聞いたことがないな。
するとエルザが「そんな……」と戦慄の表情を浮かべる。
「知ってるのですか、エルザ?」
「……ええ。魔銀竜。ミスリル・ドラゴンともいわれる、強力な古竜種よ」
「ミスリル……」
ネット小説やゲーム、アニメではよく聞く。
この世界にもミスリルが存在するんだな。
「
なるほど……。
「つまり、魔銀竜から発せられる、
リーダーさんがこくんとうなずく。
「そんなヤバいドラゴンが来たのに、ゲータ・ニィガ国は何もしてくれないのかい?」
バーマンが至極まっとうな質問をリーダーさんに言う。
「国に報告しようとしたのですが、作業員全員が倒れてしまって……。病気で動けなかったですし」
「つってもフクロウ便とかあるだろ?」
この世界には、訓練されたフクロウを使って、遠くに手紙を送る手段がある。
確かにいくら動けなくても、手紙を出せないってことはないだろう。不自然だ。
「それが……なぜだかフクロウ便を出しても、返事が来なかったのです」
「無視されたってことかい?」
「はい……」
……ふむ。ゲータ・ニィガ国王は賢君だ。国民の助けを求める声に耳を貸さない、なんてことはないだろう。
となると……。
「そもそも手紙が届いてない可能性がありますね」
誰かが妨害したのだろう。犯人捜しも必要だな。
「状況は理解しました。あなた方が働く鉱山に、魔物……魔銀竜が住み着いてしまって、困っている。ということですね」
「は、はい……」
「では、私が魔銀竜を退治してきましょう」
「え、えええ!? ほ、本当ですかっ?」
「ええ。ゲータ・ニィガとネログーマは友好関係にあります。この国の危機を、副王たる私は見過ごせません」
じわ……とリーダーさんが目に涙を浮かべながら、私の前で跪いて、何度も頭を下げる。
「ありがとうございます! 副王様! 助かります! 現場に魔物が居着いてしまったせいで仕事もできず……困っていたのです……」
彼らは国から委託を受けて、作業をしてる。
現場にいけないと(鉱石を採掘しないと)、賃金は当然発生しない。となると、彼らの生活も立ちゆかなくなるのだ。
……なんとかしてあげないとな。
「先生。アタシもお供しますぜ!」
「……私も。魔銀竜がこんなところに居るのが、ちょっと引っかかるわ」
ということで、この三人で鉱山に行くことになった次第。
さて。
私達は鉱山の場所を教えてもらい、森の中を歩いて行く。
「うぐ……」「く……」
ほどなくすると、バーマンとエルザがその場にうずくまってしまった。
「どうしたのですか?」
二人の
すぐさま立ち止まって彼女らの様子を見る。
「すまねえです……先生……なんか、急に体がだるくなったんです……」
「……多分、魔銀中毒ね」
エルザがそう分析する。
「魔銀中毒?」
「大気中に含まれる魔銀を大量に摂取することでおきる、中毒疾患よ。重度になると体内の魔力を奪われて、失神。もっと進行すると死に至るわ」
なるほど……つまり、このあたりには魔銀の粉塵が大量にある、ということか。
「せ、先生は平気なんですかい?」
「ええ」
「いったいどうして……?」
……おや?
そういえば……。
「バーマン。あなた、
ふと、私は気づいたことを口にする。
「え? そ、そりゃ……まあ。戦ってないですし」
「バーマン。
うぐ……とバーマンが気まずそうな顔をする。
「アル。
「常に
バーマンを含め、弟子達には常駐訓練を実施するように指導してきたのだが。
やれやれ。この子はサボっていたようだ。いけない子だ。
「あ、アル。まって、寝てる間も闘気を纏うって言ってなかった?」
「そうですね。それがどうしました?」
ぽかんとするエルザ。
「と、闘気を意識して纏うのって、かなり集中力がいると思うのだけど」
「最初のうちはですね。ただ、慣れれば寝てる間もできますよ?」
「…………」
おや、なにやらエルザが絶句していた。
そこへ、バーマンがこっそり近づいていう。
「……アタシでも寝てる間は無理」
「……そうよね。普通無理よね」
「……ああ。でも先生は文字通り呼吸するように、闘気を取り込むことができるんだ。通常の呼吸が闘気取り込む動作になってるんだよ」
エルザが呆れたような、感心したような、微妙な顔をしていう。
「アルって、規格外なのね。ほんとに」
まあ、魔法使いであるエルザから見て、私はおかしな人にみえるのだろう。
「ともあれ、わかったわ。アルは強い闘気を、鎧のように纏っている。戦いじゃないときも。だから、体に有害物質が入らないのね」
なるほど、そういうことか。
バーマンは戦闘時にしか闘気を纏わないため、魔銀をとりこんでしまったのだろう。
「しかし、闘気には毒が入ってくるのも防ぐ効果もあるのね。ほんとに、万能ね、闘気って」
「それを手足のように自在に扱う、先生まじすごいです!」
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