第37話 水の勇者を助け、第六婦人ゲット
私の屋敷の庭にて。
「
いや、いや。
「
「『そんな! って、あれ……?』」
ネロさんがまた居ない。
「また合体しちまったのかい?」
とバーマンが尋ねる。
「『は、はいでござる。どうやらこの子とわたくし、相性が良すぎるみたいで……』」
自分でも意図せず、二人は合体してしまうようだ。
「離れることはできないのですか?」
「『むん! むむん! ……駄目でござる。自分では分離できませぬ。
本当にこの体とわたくし、相性が良いみたいで……このままじゃ完全に融合してしまうわ』」
ふむ。二人の意識が混じり合いつつあるようだ。
このままでは肉体だけでなく、精神も統合されてしまうだろう。
「『わたくしはいいんじゃないって思うけどね。この子もここに残りたがってるわけだし。お守り様と一体化すれば、国選勇者であるこの子が、この地に残る大義名分もできるわけだしね』」
「ネロさん。それは、あなたの身勝手な意見ですよ。
私は
「あなたは、一生このままでいいのですか?」
すると
「『拙者は……元に戻りたいでござる。
あらどうして? この状態ならものすごい精霊の力も使えるし、ここに残るいいわけにもなるのよ?』」
「『拙者は、大義名分で仕方なく、アレク殿の嫁にしていただく、というのは嫌でござる。
……ふぅん。難儀な性格ね』」
どうやら、
なら、私が師匠としてまずすべきことは一つ。
「あなたたちを、元の状態に戻します」
「『といっても、どうするの旦那様。わたくしたちの肉体は、今や完全に融合してしまってるわ。二つに混ざり合った物を分離するなんて、不可能よ?』」
バーマンが首をかしげる。
「そんな難しいかぁ?」
「『たとえるなら、コーヒーとミルク、二つが完全にまじりあったものを、元の状態にそれぞれ戻すのと同じ作業よ。あなた、できて?』」
「うっ……そりゃ、むずい」
「『でしょう? さらに今、わたくしたちの魂すらも、混ざりかかっている。仮に、肉体を戻せたとしても、魂なんて形のないものをどうやって切るというの?』」
「確かに……。けど、先生ならなんとかしてくれるだろ! な、先生!」
ふむ……。
「ええ、任せてください」
私は木刀を構え、
「ネロさん、
「『は、はい……♡』」
……なぜか目を閉じて、唇を突き出してくる
前にもなんだか、こういうことあったな……。どうして皆そんな、キスを待つみたいな顔をするのだろうか。
まあ、それはいい。
今は弟子の抱える問題を解決するのが先決だ。
魂を切ったことはない。
だが、形のないものを、切ったことは……ある。空気や水。そして……病魔すら、私は切ったことがあるし、切れる……という確信があった。
「極光剣。【黄金の型】」
ぽう……と刃が輝き出す。
「黄金……黄の型ってやつか。前から気になってたんだけど、先生、黄の型ってどういう剣なんだい?」
「病魔や呪いなどを切る、退魔の剣です」
退魔の剣ならば、形のない魂だって切れるかもしれない。
「『いや、それ以前に……二つの肉体を分離させることってできるの?』」
「やってみます。黄金の型……【分霊】」
即興で作った型を披露する。
上段に構えた木刀を、
すとんっ……!
「なっ!? 木刀が肉体をすり抜けた! す、すげえ! どうなってんだ!?」
バーマンが驚愕する。
「一流の剣士は、万物を斬ることができます。万物を斬れるということは、斬るもの、斬らないものを、コントロールできるということです」
「な、何言ってるのかわかんねーけど、とりあえず人間業じゃないってことはわかったぜ! さすがです先生!」
さて。
黄金の型、分霊を使って、私は魂を切断した。そう、斬った瞬間、そういう手応えがあったのだ。
すると……。
ずずず、と二人の体が元に戻った。
「だ、旦那様!? すごいわ! 完全に融合していた肉体が、分離したわ!? ど、どうなってるの!?」
「? 融合した細胞を一つ一つ、すべて斬っただけですが?」
「は、え、ええええええ!?」
魂と違い、肉体には実態があるのだ。
「先ほども言ったでしょう? 一流の剣士ならば、万物を斬れると。たとえ完全に融合してしまった肉体であろうと、それを
ぽかんとするネロさん。
「相変わらず規格外ね……すごいわ……」
さて、さて。
弟子を元の状態に戻すことに成功できた。良かった良かった。
「アレク殿……! ありがとうでござるよ!」
「手間をかけさせて、申し訳ないでござる……」
「謝る必要なんてないですよ。あなたは、私の可愛い弟子なのですから」
「あう……♡ 好き……♡ や、やっぱり拙者……アレク殿ことが好きでござる……♡ あなたの物になりたい……」
……と、言われましても。
やはり私は、
「アレク殿。お願いします。拙者をあなたの女にしてください……!」
「……それは、自分の意志なのですね」
「はい! 大義名分とか、そういうのは抜きにした、純粋な思いでござる!」
……そこまで強く言われては、拒めない。
それに、副王として、たくさんの女と子をなす必要もあるわけだし。
「……わかりました」
「やった! やったぁ! ありがとうございます! うう、拙者とてもうれしいですっ!」
わんわんと泣き出してしまう
するとミーア姫が感心したように何度もうなずきながら、拍手する。
「ありがとうございます、アレク様♡ 勇者に選ばれるほどの強者を、わが国に取りこんでくださって。あなた様は本当にすごい御方です」
こうして、水蓮が第六婦人として、ネログーマの後宮に加わったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます