第17話
コゼットが一階へすり抜けてきた時、アカリ含め部隊の全員が驚き、敵は全員、絶望を予感した。
彼女の表情は妖艶な幼き魔女で、その場にいた全員が見とれるほどの神々しさを放っている。
そして、今までの彼女とは違う怖さと美しさが漂っていた。
「あぁ、すまぬのぅ。お主ら全員ここで眠っていて貰う」
「コゼット?」
アカリが声を震わせて、ようやく話せたが、コゼットは彼女に目をやり無言で笑うと手をかざし呪文を唱えた。
「眠れ」
瞬間、部屋全体を光が覆い、コゼット以外の部屋にいた全員がその場に倒れ眠りについた。
「さて、残りを探そうかの」
「…私も行きます」
天井から、アンナが降りてきた。コゼットは彼女のために残酷で強い魔女に戻ることができた。
己と行動を共にするということは彼女は生き残る選択をしたのだと。喜びで笑いが止まらない。
「さぁ、狩りの始まりじゃ」
久々に見る、恐ろしいほどの残酷な笑顔をアンナは喜んで一緒に笑った。自分たち家族のためとはいえ、コゼットが人間に逆らうことなく不自由に生きていることが許せなかった。
自由に想い、行動する。彼女は世界一美しい宝石のような存在。持ち主さえ自らの意思で変え、どんな場所でも光を失わない。自由で誰もが憧れる存在。そう輝き生きて欲しかった。
自分たちの身勝手な行いが結果、彼女を押し殺して、自由を奪い、臆病で弱い虚無な魔女を作ってしまい彼女は絶望した。
あの数十年、彼女の心はきっと死んでしまっていたのだろう。自分が死んでしまうにはまだ数刻ある。それまでは彼女と一緒にいることにしよう、死ぬのなら愛する人に送っていほしい。
そう祈りながらアンナは、コゼットの後をついていくのだった。
**
東塔へ続く回廊は、薄暗く、冷たい風が吹き抜けていた。ヨウスケは心の中で焦りを感じながらも、冷静さを保とうと努めていた。
「アカリさんたちの近くまで来ている筈なのに、戦闘の音すらしない。終わったのか?ここに来るまでに時間がかかり過ぎた」
「うーん、ごめんね、ヨウスケ。私がもっといろんな魔法を使えたらよかったんだけど…」ハルカは申し訳なさそうに言った。
「私は何もできずに申し訳ありませんっ」ナジャも続けた。
「いや、お2人とも非戦闘員なんで最初から期待してないですし」ヨウスケは冷静に答えた。
「酷いなぁ!武器でもあれば…」不満げに言った。
「私もです!」リナも同意した。
「だから、危ないんですよ!」ヨウスケは険しい表情で言い返した。
「魔法は勉強中だし、武器があるなら使わなきゃ」ハルカは諦めない。
「お願いですから、後ろを黙って着いてきて頂けませんか?」ヨウスケはため息をつきながら彼女たちに頼んだ。「「はーい。」」
2人の世間知らずは、死ぬかもしれないという恐怖を感じることもなく、銃など持たせて、仮に人を撃ち殺してしまった時の救われない罪悪感など知りよしもない。幼少期から武器を扱って命がけの戦闘を生き残ってきたヨウスケには、そんな彼女たちが眩しすぎた。
汚れと業を持たず、自分たち汚れきった人間を救おうと、最後まで足掻き、優しく残酷に照らしてくれる彼女たち。ヨウスケは思い知らされるのだ。
影である自分の存在を。いつかきっと、業は自分に還ってくる。でも、今は死ねない。彼女のために生きると誓ったから。この命を捨てるのは彼女のために。彼女の利益になるためになら、いつだって。
だが、そのアカリに連絡がつかないことが不安でならない。彼女の安否をまずは知りたいのだが。
「誰とも通信が繋がらないし、魔法の影響なのかGPSも機能していない」ヨウスケは苛立ちを隠せない。
彼は冷静さを失わないように努め、2人を安全な場所へ送り届けた後、アカリの元へと向かう決意を固めた。
「組織と戦闘中の可能性が高い。そろそろ東塔に着くので用心してください」ヨウスケの言葉に、ナジャが視線を東塔の両親がいる部屋へと向けようと顔を上げると、自分たちと同じように反対側から歩いてくる3人に気がついた。
「ヨウスケさん、あそこに人が」ナジャが慌てて言った。
ヨウスケは2人を自分の後ろへ下げ、戦闘態勢に入ろうと銃を構えた。
「ちっ、下がっててください。片付けますから…有香?」
それは、見知った顔ぶれだった。ヨウスケに気づいた有香は驚いた表情で声を上げた。
「ヨウスケ!?」
その後ろにいたハルカにさらに驚愕の表情を浮かべ、「ハルカっ!!!!」
「有香っ!!!!!」次の瞬間、2人は駆け寄り抱きしめ合った。
「無事だったんだね!良かった、有香っ」
「私も信じてたよ。絶対に会えるって!!」
織田は、有香、ハルカ、ヨウスケ3人のことを知ってはいたが、立場上は組織の人間だ。
日本でヨウスケたち政府に接していた事がバレてしまえば潜入が明るみになり、組織に消され、二度とハルカを守ることが出来なくなる。有香のこともだ。
ヨウスケに一瞬、目をやるが、彼も分かっているようで、驚いた表情を浮かべたのは最初の一瞬だけで、後ろにいたアルフレッドと有香には気づかれていないはずだ。ここは演じるしかない。
織田は組織の幹部としての立場を崩さず、冷徹に振る舞い続けた。
「有香。彼女らは知り合いなのか?」織田は冷静に尋ねた。
有香は困惑した表情で答えた。
「どこかで見たような気が…」アルフレッドが、思い出したように笑顔を見せながら話し始めた。
「ああ、思い出した。君たち、確か…」
ヨウスケは軽い感じのアルフレッドに警戒心を露わにし、威嚇した。「有香、お前。なんで親が死んだ原因になった人間たちと一緒にいるんだ」
「君たちこそ、何故、普通の高校生だと思っていた一般人がこんな場所にいるのか聞きたいとこだね。それに、僕の素性がバレているのも気になるし…」アルフレッドの表情が明らかに威圧的なものに変わった。
有香はその変化に気づき、慌ててヨウスケに説明しようとした。「ヨウスケ、話をする余裕は今はないの。私たちは城内に残っている王族の人たちを探しているところなの」
ハルカとようやく会えたというのに、今の状況は危うい気がしてならなかった。敵意丸出しのヨウスケとアルフレッドが、今にも衝突しそうな雰囲気だ。
状況を変えなければ、ハルカとヨウスケが危ない。どうやってアルフレッドの気を反らせようかと考えていると、ナジャが前に勢いよく飛び出した。
「王家の人たちって!」ナジャはヨウスケの両手で止められながらも、苦痛の表情を浮かべて精一杯叫んだ。「殺すのですか!」
ハルカは有香を真っ直ぐに見つめ、真実を知るために有香がそんなことをするはずがないと信頼を込めて聞いた。「有香?」
有香は少し間を置いてから答えた。「保護したいとは思ってる」
嘘はついていない。しかし、組織が行っている行為は…。
「城の中を見たか?そこら中死体だらけだ。組織が動いている目的がそれだとは思えない」ヨウスケは有香が組織にいたうえに戦闘の状況を知りながらも、組織の幹部を2人も引き連れているのを疑った。有香は、組織に何かしら深く関わっていると考えざるを得なかった。
「有香、何があったのか。全部終わったら聞かせてくれるよね」ハルカは有香を信じるしかなかった。有香が自分を裏切らないという絶対の自信が、彼女にはあった。有香と一緒に過ごした年月を信じて。
「うん」有香は短く答えた。
織田も、これ以上ヨウスケがアルフレッドを威嚇して最悪な状況にならないように動かなければならなかった。ハルカたちを無事にアカリの元へ向かわせるために演じ続けた。
「仲間を探して城を彷徨いているのなら、気をつけることだ。西塔は仲間が占拠している。魔女たちや部隊もそこにいる」そう言って、立ち去ろうとしたが…。
「織田。何故、彼らに情報を流すんだい?あそこには僕らの仲間もいるんだよ」アルフレッドが納得のいかない表情で織田を見つめ、探ろうとした。
織田は一瞬戸惑いながらも、冷静さを保って答えた。「アルフレッド、彼らが本当に敵であるなら、彼らに誤情報を流すのも戦略の一つだ。だが、今は無用な争いを避けるべきだ」
その言葉にアルフレッドはさらに疑念を深めた。「最初からずっと違和感を感じていた。有香も織田も、何故か僕をこの2人から急いで自分をここから立ち去らせようとするのか…」
2人の行動は明らかに、敵であるはずの彼らを助けようとしている。有香だけならば、友人であったために納得もいくのに、何故織田までもがと、一番信頼できる兄のような彼を疑ってしまいそうになる。
アルフレッドは疑念を捨てきれず、有香に向けてさらに言葉を続けた。「それに、仲間と魔女を探しているのなら、西塔で合流して僕らを襲ってくることだって考えられる。少しでも有香様にとって危険な存在は消したい」
「あと、この子らは仲間を探してここを目指していたのかい?もしかしたら、有香様を奪いにきた魔女側の作戦かもしれないだろ。同級生を使って、油断させるって」
ハルカたちを逃がそうとする織田と、有香を危険から遠ざけようとするアルフレッドの間に微妙な雰囲気が流れ出す。
ヨウスケは有香を疑い出した。まさか組織に潜入中の織田が、自分たちを助けてくれるとは思っていなかった。ハルカの母親と織田の関係を彼は知らない。織田に関しては、新日本政府から密命を受けている諜報員としてしか認識がないのだ。
諜報員として任務を遂行するために、自分たちを殺す可能性もある。ここは、何とか切り抜けなければならない。
今のヨウスケは普段の冷静さを欠いて焦っていた。状況は一触即発の緊張感に包まれている。
だから、気が付かなかったのだ。有香と織田が自分たちを守るためにアルフレッドを遠ざけようとしてくれていることに。
普段なら他人の表情や仕草を観察できているのに、今のヨウスケにはその余裕がなかった。西塔に敵が向かって部隊がいるのを聞き、アカリの安否が気になって見逃してしまったのだ。
だから、ヨウスケは1人で2人を守らなければと最悪の考えを行動に移そうとしていた。
「…探してる。仲間を探してる途中だった」
ヨウスケは油断させるために苦し紛れに答えた。
「なら、行け」織田の言葉に、有香と織田は内心安堵した。彼らはこのままハルカたちを無事に逃がしたいと願っていた。
ハルカとヨウスケの自分への信頼は疑われたかもしれない。今すぐに話をして、3人で日本に帰りたいとも思ったが、今、組織を抜ければ有香が考えた世界の実現はできない。アルフレッドと織田は有香の意思に賛同し、協力し、守ってくれている。彼らを裏切ることはできない。
今は裏切り者だと思われてもいい。2人に危害がないのならば、我慢もできる。いつか、きっと誤解も溶ける日が来るはずだ。
「ハルカ。ごめんなさい、今は話せなくても!」
有香は声を絞り出した。
その瞬間、有香たちとハルカたちの間に魔法陣が突然現れた。煌めく光が辺りを照らし、緊迫した空気が一層強まる。
バンっ!!
「動くなっ!全員だ」
魔法陣の中から出てきた真理亜が空に向かって、銃を撃ち、そのまま銃口をハルカたちに向けた。
「真理亜...さん?」
「すみません、有香様。コゼットが戦闘に介入し、組織の人間がほぼ殺られてしまいましたので、2人に協力を求めに来たのですが...」
「コゼットが何故?」
「そちらの姫君を、渡して貰う」
「嫌だよ。」
ハルカはあからさまに拒否の態度を取りながら、ナジャを隠すように自分の後ろへ押し込む。
「真理亜さん。何を?」
「私は行きません!」
「東塔の最上階には王と王妃がおります。そして組織の人間がいつでも狙撃できるよう待機中です」
「王族殺しは、大罪ですよ!」
「大義のためなら、致し方ない。王は私たちの説得には頷かなかった」
「彼女の真名は王しか知らない」
「貴女が知らないのは、分かっている。だから、王が教えてくれるように説得してほしい」
「するわけがないじゃんっ!あなたたちは諦めて消えればすむことじゃ」
「軽く言ってくれる。撤退すれば、私たち組織の場所が彼女に知られてはコゼットに皆殺しだ」
「コゼットはそんなことはしない!」
「現に、いま城内で動ける戦闘員は我々をいれて数名しかいない、手段を選んでいる場合ではないんだよ。平和な国の魔女さんたち」
「ちっ、邪魔しないでくれますか。どいつもこいつも何時になったら行けんだよっ」
イラついた声色でヨウスケは動いた。
ハルカは様子のおかしいヨウスケを止めようと手を伸ばしたが、彼はそれよりも早く前に出て有香の腕を掴むと彼女を後ろから抱きしめ、銃口を頭に当てた。
「ヨウスケ、何をするつもり?」とハルカが叫ぶ。
彼は真理亜に全員気を取られていたので有香を人質に4人で逃げる考えを行動に移したのだ。
「ヨウスケ?」
有香は状況が掴めずに、パニックになってしまいアルフレッドから注意を逸らしてしまう。
真理亜はヨウスケの行動に呆れた様子で
驚いたり慌てることもなく銃口をハルカたちに向けたままだ「有香様を離しなさい」
「銃口を彼女から外して、手元が狂ってしまうかも…」
カチリっ
ヨウスケは後方からの音に反応して、目線を向けた瞬間
パンっ
1発の乾いた発射音が辺りに響いた
弾はヨウスケの首の端を貫通すると、彼は意識を無くしつつ有香に支えられながら、ゆっくりとその場に崩れ落ちた。
「ヨウスケっ!!」
「それで優位にたてたつもりか?」
「馬鹿だな。僕は君らなんて知らないし興味もない、だからーー」
冷たい視線で、アルフレッドがとどめをさそうと再び銃を動くことのでき無いヨウスケに向けた。
「いやあぁーーー、ヨウスケ!」
ハルカは顔を歪ませ、泣きながら有香に抱かれている血まみれのヨウスケに近づいた。
「ヨウスケっ。返事をして!」
「有香様。離れてください」
今しがた人を殺すつもりで撃ったのにも関わらず余りにも非情に話をするアルフレッドが、怖くて震えが止まらないが、今ヨウスケから自分が離れてしまえば彼は…。
「嫌っ!なんでっ。」
「殺らなきゃ。貴女が死んでた」
「ヨウスケは、そんなことしないのに」
「彼は、我々の仲間を殺している」
「私たちがいたからっ」
ハルカはヨウスケの首を抑えながらこれ以上血が流れないように無意識に魔法で傷を塞ごうとしていた。
「君たちを守るために殺したんだろう。今の僕と何の差があるんだ」
「アルっ?!ハルカたちを傷つけないでっ」
「何故ですか?貴女を守ると約束させといて。友達だから見逃せとでも言うんじゃ無いですよね。見逃した後で、コゼットに頼んで、僕らを攻撃するかもしれない。しかも彼は貴女を利用しようとしたんですよ」
『友達なのに』そう、アルフレッドに捨てられそうな子供のような眼差しで言われ有香は一瞬で身体から温度が消えていくほど、恐ろしいまでの彼の執着に気づいてしまった。
彼も必死に有香を守ろうとしているだけ、守ってと願ったのは有香自身で、ヨウスケを傷つけたのも結果的には彼女が誰かを傷付けてまで手に入れたい願いを想ってしまった自分の業だ。
「我々には医療チームがいる。その中には再生の力を持つ魔女もな」
真理亜はこれ以上、時間が経てばコゼットが此処まできてしまうのを考え、ハルカたちに揺さぶりをかける、ナジャは決意した。
「私が行けば、ヨウスケさんを救って頂けますか」
「だめ、だめです。真理亜さん!こんなやり方じゃ誰も救われない」有香は懇願した。
「我々は救われたいんでは無く、取り戻したいだけです。魔法の無い、かつての世界を、こんな争いだらけの世界はいらない」
織田はアルフレッドから静かに銃を奪うと諦めた表情で有香を見つめ心の底から有香を哀れんだ。
彼女はただ、平和を望んだだけだ。だが、彼女が今死んだら組織を変えることも、魔法使いたちを守ることも出来なくなる。だからこそ普段、人など自らの意思で殺そうとせず優しすぎたアルフレッドでさえ彼女の願いを叶えようと、必死に有香を守ろうとした結果が、悲劇を呼んだ。
誰も救われない、救いたいのに…。
突然、背後から大きな爆発音が響いた。
皆の視線が一斉にその方向に向けられると、コゼットがアンナと姿を現した。真理亜の予想通り、時間はもう残されていなかった。
「ここまでか…」織田が低く呟いた。
真理亜は深呼吸し、決意を新たにした。「最後の交渉だ。ナジャ、もしあなたが本当に彼を救いたいなら、私と来て。」
ナジャは一瞬、ハルカと目を合わせた。
ハルカの目には、複雑な感情が入り混じっていた。恐怖、怒り、そしてわずかな希望。しかし、それでも彼女はうなずいた。「分かりました。」
有香は真理亜を止めようと彼女に向かって走りだす
「有香様、無駄だ。アルも真理亜も信念がある、今の貴女では覆せない」織田が慌てて止めた。
ナジャは泣き崩れるハルカに近づいて彼女に優しく刺激しないように話しかけた。
「ハルカ様、私は行きます。此処までお連れ頂きありがとうございました」
言ってはだめだと声にならない表情でナジャにハルカは訴えるが、ヨウスケの血は止まらず、目の前で人が死ぬという恐怖で頭がいっぱいになっていた。
「....ヨウスケ、死んだら許さない。それにあんたが死ぬところは視えていない。大丈夫、生きるよ。だから、、動いてよ」
織田に銃を奪われ、アルフレッドは死にかけているが生きているヨウスケを確認する。彼を殺すつもりは最初から無かった。死なないギリギリの箇所を狙って撃ったアルフレッドには別の目的があったのだ。
「僕が彼を生かしてあげるよ」
信じられないと怒りを丸出しにハルカはアルフレッドを睨みつける。「あなたがやったのに!!」
「有香っ。ヨウスケを絶対助けて」
アルフレッドが自分のために動いてくれていることにハルカたちに対して罪悪感が沸き起こってきたが、ヨウスケを救いたいのは強く願っている。
「......必ず」
「そろそろ、行きましょう。コゼットにこの居場所を悟られてしまうと厄介です」
「待って、私も行く。私が一緒ならコゼットはいきなり襲ったりしない」
有香にヨウスケを託すとナジャに近づいて、力強く手を握ると強い眼差しで彼女をみたのでナジャは黙って涙を流しながら頷いた。
正直、コゼットの身内を連れて行動はしたくは無かったが今は場所を速やかに離れることが優先事項だ
「.....分かりました。こちらへ」
「ハルカっ。無茶しないで」
「有香。終わったらキチンと話そう」
「....うん。ごめんね、ごめんハルカっ」
有香は罪悪感から涙が止まらなかった、3人を危険に巻き込んだのは自分だから織田に銃を返してくれるように頼むとアルフレッドは有香に近づく
「有香様。織田と行ってください、僕は彼を医療班に送り届けます。貴女の命令なら」
「ありがとう、アル。必ず救って」
「イエス」
「姫君、魔女の子いくぞ」
「俺たちもいきますよ。」「はい」
有香は織田に呼ばれヨウスケをアルフレッドに託した。
織田が有香を先に魔法陣へ向かわせ、アルフレッドに近づいて有香たちに気づかれないように小声で背を向けて話しかけた。
「....殺すなよ」
「分かってるよ.....収集はさせて貰うけどね」
「末端を連れ帰ったところで、情報などたかが知れているぞ」
「うん。でも、彼は僕らを知っていた。連れ帰る理由はあると思うけど」
「アルフレッド?...何か...」
2人の雰囲気を怪しんだ有香が声をかけた
「あーーー、有香様。安心して行ってください」
何も言わせないと笑顔で彼が、有香の言葉を遮ると「うん............」有香はもう何も言わなかった。
ハルカは魔法陣を越える前にヨウスケをみたがそのままナジャと消えて行ってしまった。
「.......ヨウスケ...助けるから絶対に...」
そして、魔法陣の中に消えていった。
**
「っつ?!」
意識が戻ったヨウスケが痛みで呻いた。
「生きてるね。君はとても運がいい、でも
組織の人間を今までに数名ほど君に殺られているし僕と織田のことを知っているよね。ちゃんと話せるようになったら僕と話をしようか」
「なぁ、アリス。君はどうする彼はジャンを殺した。瀕死の彼に復讐する?助けるかい?」
いつの間にか、目の前にまで来ていた女性にアルフレッドは問いかけた「助けるわ。仕事だもの」
彼は彼女の言葉に安堵の表情を浮かべた。
「そうか....助かるよ。有香様を守るためには、こんな汚いことも必要だから...」
「それが貴方のやることなの」
「そうだね」
「貴方ではなりきれないわ、優しすぎるもの。きっと罪悪感に押しつぶされる....」
「それでも、やるさ」
どんな手を使おうが彼女の願いを叶えよう、こんなに誰かに依存したことは無かったな。そう、想ってアルフレッドは笑みを浮かべた。
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