第24話
翌日の月曜日は雪が降った。
記録的な大寒波がやってきたらしく、天気予報は今日、明日と雪だるまのマークが並んでいる。カーテンを開けてみると、温度差のせいだろう。窓にびっしりと結露ができていた。
こんな寒い日には猫のように炬燵に丸くなっていたいのだけれど、生憎と本日は登校日である。健全な高校生の僕としては、犬のように外へと飛び出さねばならなかった。
朝食を食べ、支度を済ませ、玄関を抜けて、外へ出る。外は一面の銀世界だ。
身も心も凍えてしまいそうな一陣の風が、ビュッと僕にぶつかってくる。顔が冷たい。耳がジンジンと痛む。身体を震わせ、息を吐くと、見事なまでに白い蒸気が立ち上った。
見てみると、すれ違ったサラリーマン風の男性も、小学生くらいの子供も、ぶくぶくに着膨れしたお爺ちゃんも、みんながみんな蒸気を上げている。
『冬に息が白くなるのは、空気が含むことのできる水分量が温度によって変化するからだ』
と、どこかで読んだ雑学が頭をよぎった。
温かい呼気が外の空気に冷やされて、含むことのできなくなった水分が水蒸気となるらしい。
ふーっと大きく息を吐いてみる。
すると、予想通り機関車みたいに蒸気が立ち上った。僕の周りのあちこちでも白い蒸気が尾を引いている。
何度も何度も、蒸気は上る。
呼吸をするたびに、蒸気は上る。
馬鹿のひとつ覚えみたいに、蒸気は上る。
たった一度の例外さえ、そこにはなかった。
当たり前のことだ。常識すぎて、誰もそんなことを気にはしないだろう。
けれど、僕は――少しだけ忘れてしまっていた気がする。
この世界には例外がないことを。
無機物も有機物も。生き物も非生物も関係ない。たとえ人であっても、因果律から逃げ延びる術は決してないのだということを。
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