第9話

「驚きましたわ。今朝からずぅーっと上の空なんですから。心配しましたのよ?」

「心配していたら手刀はいれないと思うけどなぁ……」

「何か言いまして?」

「いいえ。あなたに心配していただけるなど夢のようです」

「……マリーを口説くな」


口説くわけないでしょ、殿下の婚約者を。俺がマリーに殺されるわ。

とか思っているとマリーソワに睨まれた。心を読まれているようでちょっと怖い。


「ところで、何を考えていたんだ?」

「そうですわ。わたくしたちにお話しなさい。三人寄ればなんとやらです」


キラッキラした眼でこちらを見てくる。


これはー、あれだなー。面白がってるんだろうなー、こいつら。俺の悩んでるとこをあんまりみないからって、からかってやがる。


「………………。先日、父が隣国との小競り合いに出向こうとしていたので、それに付いて行こうと思ったんですよね。それで声をかけたんですが、何故か自分を心配していると思ったようで、『心配はいらない』って言われまして。どう言えばよかったのか、と。次はどう言おうかと考えていたんです。いや、心配していないわけでも無いですがね?」

「ふむ…確かに、お前は次期当主だからな。若い内に詳しいことを知っておく必要があるだろう」

「そうですわね。戦が起きるというわけではありませんが、万が一に備え、早くに教わることも必要でしょう」


うーん、意外と真面目に相談に乗ってくれるんだよなー。この人たち。そして今日もしっかり、ちゃっかりと猫をかぶっておられる。


貴族、ましてや王族ともあろう者たちが公の場で素を出すなど、言語道断だ。


昨日のは、まあ…。昔馴染み同士でご愛嬌ってことで…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る