第10話

「そうだ。お前もそろそろ婚約者を決めたらどうだ?人がいつ死んでしまうかなど、わからないからな」


………わかっている。半年前から少しだけ、隣国の者の態度が変わってきている。

領地の兵たちもどこか、ピリピリとした雰囲気を纏っていた。

あの時の父も、いつもより少しだけ、緊張しているように見えた。

…もしかしたら、もしかすると、いつか小競り合いが口だけでは済まなくなるかもしれない。



「それに」



殿下の声が少し大きく、硬く聞こえた。


気がした。


「愛する者がいると、それだけで気合いを入れる理由になるし、癒しにもなるからな。私にとってのマリーのように」

「やだ、リヴィ様ったら。こんなところで」

「そんなに可愛い顔をしないでくれ。抱きしめたくなる」

「もうっ……!」


あーーー。今日のオムライス、うまいなぁ。ふわとろで渦を巻いてるタイプのやつだ。上からかけられているキノコのクリームシチューが優しい味をしている。


今日も学園内は平和だなぁ。





放課後、約束通りグラジオラスの部屋に訪れた。ドアをノックすると、無愛想な顔が出迎えてお茶を淹れてくれる。猫みたい。


「ほらこれ」

「ん。クッキーと、手紙……」

「僕はちゃんと渡したからな」

「ああ…わかってる…。ありがとうな…」

「……なんか、ちょっと気分が下がってないか?大丈夫か?」

「大丈夫だ」


グラジオラスが淹れたお茶を飲み、心を落ち着かせる。


そして、意を決して手紙を読んだ。

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