第6話

「いやまあ、あの時は本当に何やってんだコイツら、って思ったよね」

「……………。まだ根に持っているのか…」


父の横で仕事を手伝いながら、愚痴ってみた。ちょっとは悪かったと思っているらしい。思われても、ねえ…?


「ところで、昨日伯爵家に行ってきたんだろう?チア嬢との仲はどんな感じなんだ」

「あ~、そうですね。俺と会ってくれませんでした」

「……お前、何かしでかしたのか?」


いやあ、心当たり無いんだけどね~。


伯爵夫妻にも聞いてみたが、「何も知らない」「わからない」と言われた。


書類をさばきながら父と考えてみたが、特に思い当たることもなかった。なので仮の理由として、『子供扱いをしたから』ということになった。会うたびにぬいぐるみとか絵本とかあげてたからね。

そんな結論が出たところで、衛兵団長が執務室に現れた。


「ご当主!隣国の奴らが来たぞ!」

「やはりか。すぐに行こう」

「父上、俺も…」

「お前は私の確認がいらない書類を片付けてくれ。心配はいらん」

「え?いや…」

「チア嬢と早く話をしろよ」


バタン。


行ってしまった。心配したんじゃなくて、仕事を見てみたかったんだけど…。


取り敢えず、俺ができる書類を片付けておく。それから、怪我人が出てもすぐに処置が出来るように、使用人たちに道具を揃えてもらう。

今までは口喧嘩みたいなものだけで終わっているらしいが、何が起こるかはわからない。念には念を。


「……仕事の引き継ぎもあるし。なかなか伯爵家には行けないんだよなあ…」

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