第3話

「悲しいな。せっかく、プレゼントも持ってきたのに」

「僕から渡しといてやるよ。あと、チアのクッキー、食べてみろ。お前好みの甘さだぞ」


本当だ。甘いやつ苦手なのバレてたのか。なんかハズ。


「うまいな。スターチアはお菓子作れるのか、天才だな」

「当然だ、チアだからな。可愛い上に家庭的なんだ。………………女神か??」

「ああ、うん。そうだな~。で?お前、知ってんだろ」

「……何がだ?」


口元がピクッと動いた。グラジオラスは嘘をつくとき、必ず顔が引きつる。黒だ。


「何もどうも、スターチアが会ってくれない理由だよ。隠せると思ってんのか?」


ハチャメチャに不機嫌そうな顔をされる。


「…思わない、が。教えてやらない。というか、思い出したくない」

「えぇ~。そんなに嫌な理由なのか?」


急に死んだ魚の目をして、小さい声でグチグチ言い出した。呪いの言葉でも吐いてそうなぐらい、顔が死んでる。そんなにか。

俺、なんもやってないよ~!?


「ところで、今日は何を渡すつもりなんだ?」


あ、コイツあからさまに話題変えやがった。

何事もなかったような顔をして聞いてきた。記憶から抹消でもしたんだろうか。


「髪飾りだな。あの子、オシャレ好きっぽいし。うわー、ぶっさいくー」

「どんなやつだ」

「どんなやつって。普通に花と星のコーム」

「………まじないと掛けてんのか?」


そういえば、グラジオラスに言っていなかった気もする。伯爵夫妻には伝えたが。


「暫く忙しくなるからな。最後…ではないか…。まあ、顔が見たかったんだよ」

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