第18話 ボッチ国王陛下と交渉する
「カズオよ様々な協力に感謝する。褒美をとらす故、何か希望が有れば申してみよ」
「ははあ、有り難きお言葉に存じます。なれば私が討伐致しましサンダーライガー・デザースターの肉と皮を売らずに私の物としたいのですが」
「何?あの堅くてまずい肉が欲しいと申すか?変った奴よのう」
「お言葉を返すようですが料理次第でとても美味しくなるのです」
「ほほう、それは面白いことを言う。ならば我が国の王宮料理長と料理比べをしてみぬか?審査員は我と妻と娘と宰相でどうかな?もしそちが勝ったならば肉も皮も好きにするが良い。そして我は結界を付与した魔石と井戸ポンプの代金を商業ギルドの相場の10倍支払おうその代わりそちが負けた場合は判っているな」
「有難う御座います。それでは私の錬金術でサンダーライガー・デザースターを解体してしまいます。料理長様の必要な部位をお渡しします。不安でしたら鑑定士さんをお呼びになってください」
そうして翌日、俺の料理はサンダーライガー・デザースターのステーキとカツ丼にした。まずカツだけに千切りキャベツとトンカツソースを付けて味わってもらい、その後カツ丼を出そうと思う。
さあ料理対決の始まりだ。
最初は何の変哲もないステーキだ。無論料理長さんもステーキだ。肉の味、口当たりを確認するのに最適だろう。
料理長さんの出してきたステーキは、硬くて不味かった。
「やはり不味いな」
国王陛下を始めとする審査員の皆さん、同意見だ。
「な、なんだこの肉は本当にさっきの肉と同じ肉なのか?同じ部位なのか?」
俺のステーキを食べた審査員及び料理長さんが驚いている。勿論同じ部位だ。肩ロースの塊を2等分して、料理長さんが先に選んで俺が残った方を使ったのだ。
「美味い美味い。それに柔らかい!蕩けるようだ」
「これは完全にカズオ様の勝ちですわね」
王女様の言葉に皆さん頷いている。
「私の負けだ。カズオ殿、これは一体どの様な方法で調理したのか?ご教授願いたい。どんなマジックを使ったのだ?」
料理長さんが頭を下げてきた。
「肉を熟成させて、肉を柔らかくする舞茸と言うキノコをみじん切りにして肉にまぶして、更に肉を筋切りして、道具を使って肉に多数の穴を開け、肉を叩いたりしているんですよ」
「ううむ、何やら色々と手をかけているのだな。師匠私にその料理法を教えて下さい」
「やめてくださいよ料理長さん、俺は素人で料理人ではありません。師匠だなんて呼ばないで下さいよ。料理法なら後で一緒にやってみましょう。それより次は俺の生まれ故郷のカツ丼と言う料理を、本来豚肉を使う所にサンダーライガー・デザースターの肉を使ってみたサラデス・カツ丼を食べてみて下さい」
「おお、それは有り難い。馳走になろう」
「まあ、新しい料理なの?楽しみ」
俺はまず、カツの状態のままで食べてもらう。
「このキャベツがこのソースのおかげで美味しく頂けますわ」
「カツとは肉に衣をつけてパン粉をまぶして油で揚げたものなのですな。ステーキと違ってまた美味しい料理になるものだ」
俺はタマネギとカツで丼物のタレを利用して丼物の具を作る。
仕上げにダンジョン雉の卵でふんわりトロトロにする。丼にご飯をよそって出来たばかりの具を乗せる。
ストレージからあらかじめ作って置いたカツ丼を取り出して並べていく。それに沢庵と豆腐の味噌汁を添える。俺は箸を使って食べて見せるがフオークも用意してある。好きな食べ方をしてもらおう。
「では、いただきます」
「いただき……」「……まーす」
「何ですか、このトロトロの卵、すごく美味しい」
「このタレの味、初めてよ」
「このタレによって衣が随分美味くなるものなのだのう」
さっきのカツだけの時よりすごく美味しい。このライスも美味しくなってる。このタレの正体も知りたい!」
大好評だった。
「カズオよ、我が悪かった、我の負けだ。約束通り、あれもこれも10倍の値段で買い取ろう。サンダーライガー・デザースターの皮も肉も自分のものにせよ。元々魔物は討伐した者に所有権が有る。横取りするような真似をして済まなかった。許してくれ」
国王陛下が正直な気持ちの持主で良かった。
「のう、カズオよ、このまま王都で暮らさぬか?出来る限りの便宜を図ろうぞ」
『お言葉ですが俺は自分のダンジョンでのんびり暮らすのが最上の人生と思っております。ですがあの通信機を置いて行きますので、何か有った時には連絡して下さい。可能な事であれば駆け付けます。そこでお願いですが王都にも自宅を置いておきたいので、物件を紹介して頂きたいです」
「そうかそうか。良し分かった。これ商業ギルド長に連絡を入れよ。明日にでも商業ギルドに行ってみると良い。気に入った所を選び取るが良い」
「有難うございます。それでは今日は料理長様と実際に料理しながら教えられるところは教えて行きたいと思います。明日商業ギルドに行ってみます」
明後日には俺の城(ダンジョン)に帰れるかな。
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