第17話 ボッチ国を覆う結界を張る

警備兵の1人は俺の顔を知っていてくれた。王宮の井戸設置の時に彼も警備に当たっていたらしい。

警備兵の詰め所で不審者の口の中に入った【南洋毒蝙蝠】の死骸を収納して取り出して証拠品として提出する。下手に触ったりしなければ苦にならない程度に毒性を弱めて置く。不審者も自供させるために10分の1に薄めた奇跡の水をスプレー容器に入れておいたものを不審者の口中に噴霧した。これで取り調べ中に具合が悪くなることは無いだろう。


工事途中の現場が気になるので警備兵の責任者に後のことを頼んで井戸設置現場に戻った。

何か判れば王宮の騎士団に報告が行くことになっている。


現場に戻ると、ほぼ完ぺきに設置完了していた。さすが王都の製造ギルドの職人さん達である。後2~3日で完全に任せても問題なさそうだ。


仕事を終えて王宮に泊まり込んで仕事をしていたので王宮に帰ると、騎士団から国王陛下に報告するので一緒に来て欲しいと請願された。


不審者の自供によると男はこの国の南方の国境付近でコソ泥をしていたが、3人組の男たちに捕まってしまい、3人組から自分達の

仕事に加わるなら見逃してやると言われたらしい。

その仕事というのがどこかの町に行って【南洋毒蝙蝠】の死骸を井戸に投げ入れて、その井戸の水を飲んだ住民がどうなるか経過を見守って報告しろと言うものだった。

10匹分の死骸を預かったが5匹分の報告をしたところで満足のいく結果だったらしくて残りの死骸は呉れてやるから此処からずっと離れたところへ行って好きにすればいいとお役御免になったのだと言う。

男は王都に来るまでに4つの町で井戸に死骸を入れて住民が外に出てこなくなったら動けなくなったものと判断して、小金を持っていそうな家に押し入り、泥棒していたらしい。

ところがここに来る前の町では何事も無かったように住人が元気にしていたのでその町を諦めて王都に来たということだった。


なぜ、大金持ちの家の井戸を狙わなかったのかと尋ねたら

そんな家は腕っぷしの強い用心棒を雇っている可能性が有るし

掴る危険が多い、ならば小金しか持っていなくとも不特定多数の家に順次押し入った方がアシが付きにくいと考えたからだそうだ。

あるいは自分の家の井戸を使わずに公共の井戸を使うケチな商人が奉公人に水を汲ませるかもしれない。そんなケチなら用心棒を雇ったりしないだろうと、大量に水を汲みに来る者を見張っていようと思ったらしい。

死骸を渡してきた3人組の特徴を聞くと隣国のラフレシア―ナ帝国訛りが有ったらしい。軍事目的につかえるかどうかを試していたのかも知れない。


そこで俺は国王陛下に提言した。

「サンダーライガー・デザースターの魔石に毒を有した生き物や敵愾心を持った人間が入れない結界を張る魔法を付与してこの国全てを結界で覆ってはどうかと。


その様なことが本当に出来るのか?

当然そのような疑問が出た。

「だったら俺が付与して見せます。見届け人として賢者クロード様に立ち会って頂きたいと思います」

「うむ、賢者クロードよ頼むぞ」

「御意」

俺達はこの国の中心地に有る【セントランの塔】に移動した。

高さ150mの丘の上に有る50mの塔の頂上付近に魔石を置いて

俺は結界魔法を付与して発動させた。


この計画を実行するにあたって俺は物々交換マーケットで3台1組のトランシーバーを手に入れて1台を冒険者ギルド長に協力を依頼して毒を持つ魔物の捕獲をお願いしておいた。もう1台は国王陛下に預けて計画の推移を報告することになっている。

トランシーバーは電気から魔力に対応させていて、充電式だったのを魔石交換で使えるようにしてある。

またこの世界では電波を発するものは雷の放電位のものであり混線の心配がないし無線傍受される恐れも無い。

更にこの世界の空気に存在する魔素が電波の通り道になって、減衰することも無い。その通話距離は無限大と言ってよい。


というわけで魔石による結界の効果を確かめるためにギルマスにトランシーバーで通話して毒を持つ魔物を結界内に放り投げて貰った。

「こちらテオドロサ。ダメだ魔物は何かにぶつかって撥ね返されてるぞ!どうぞ」

「こちらカズオ。了解しました。今度は魔物を手に持って入って下さい。どうぞ」

「こちらテオドロサ。だめだ、俺ごと撥ね返される。結界がちゃんと仕事をしているってことだと思っていいんだな!」

「こちらカズオ、そうです。結界は生きています。次はB地点に移動して同様に試して下さい。どうぞ」

「了解。これより移動する。どうぞ」


南門をA地点。西門をB地点、北門をC地点、東門をD地点として

各門で効果が有ることを確認する。一応地下からも入れない様に

毒水や毒を持つ気体の侵入も阻止できるようにしてある。


後は空からの侵入だがこれは俺が飛行魔法で試してみるつもりだ。

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