第16話 ボッチ井戸設置協力依頼される
1度見ただけでは上手く設置できるかどうか自信が無いということで、暫くの間ポンプ設置に協力して欲しいと懇願されて止む無く承諾した。
というわけで隊とはここでお別れだ。
「もうカズオの料理を食べれないのー悲しいよー」
「実に残念です」
みんなには悲しがられたが仕方ない。恨むなら国王陛下を恨んでくれ。命が惜しくなかったらだけどな。
次の日から王都の貴族街からポンプ設置が始まった。製造ギルドの職人さん達は10人。
参加設置に自信がついた人たちから自分達だけで作業してもらうことにした。途中から井戸の蓋とポンプの台板を作る為に木工職人さん達にも参加してもらっている。
最初につまずいたのは井戸の蓋の加工だった。上に人が乗っても壊れないような頑丈な板を井戸の形に合わせて加工しなければならない。角やとげで怪我しない様にカンナやヤスリがけしなければならないし、これは木工職人に任せた方がいいみたいだ。給水管を通す穴も開けないといけないしボルト穴も開けないといけないので穴あけドリルに慣れないといけない。
ポンプ取り付けビス穴も注意を要する。結構熟練を要する。
俺の場合は設計図に寸法を記入して、錬金空間で術を発動すれば
思い通りの物が出来てしまうので気にしていなかったが素人がやろうとすると大変なことだったと思い知った。
大変なのは塩ビ管の加工もだった。接着剤が直ぐに固まってしまうので、何個ジョイント管を駄目にしたことか。幸い塩ビ管は切って使えるのでそこは助かった。
こうしてみると、俺1人で設置して見せたのは凄いことだったんだなと思う。魔法と錬金術が使えるって有り難いことなのだ。
重い物でも軽々扱えるし玄人はだしの加工も出来てしまう。
そんなこんなで5日間、全員で10箇所の井戸に設置出来た。徐々に慣れてきた職人さん達は手際も良くなりドワーフの鍛冶職人さんは錆びにくいステンレスに良く似た金属で給水管を作ってきた。ポンプ本体に接続するためのネジきりをどうするかと考えていたが思っていたより早くモノになりそうだ。異世界技術恐るべし。
今では次回設置予定の井戸に木工職人が先乗りして寸法を測って工房で蓋と台板を作ってくるようになった。この時活躍するのがリヤカーだ。重い蓋を人力で運ぶのは無理がある。
このリヤカーも職人さんは改良型を作っていた。長い材料を運ぶのに俺が提供したリヤカーでは全長が短いので物がはみ出すので
荷台を延長したリヤカーを作って使っていた。
鑑定士とクリーン魔法を使える魔法使いにとっても、良いアルバイトになっている。
ポンプ設置には普通に人件費が掛かっているのだ。
工事費は王国で全額負担するという。毒を入れられる危険が有ることがわかった今、放っておくことは出来ないのだ。
ポンプを使っていることは、他国に対して技術力の誇示になる。
他国の大使に対して
「我が国ではこんな便利な機械を作って使っているのですよ」と自慢出来るし、それが一般庶民にまで行き渡っていると自慢したいのだ。
もう一つの目的は
「我が国の井戸に毒を入れようとしても無理ですよ」
と宣言するのだ。井戸の蓋には毒を防ぐ結界が張って有ると忘れずに知らせるのだそうだ。
そんな中俺の敵察知レーダーに不審な影が引っ掛かった。王都への南入場門に【南洋毒蝙蝠】の魔力を持った人物の魔力が感じられる。
俺は作業中の職人さんの親方にそのことを告げて後は頼みますと言って南門に走った。
南門に行くと既にその影は都内に入り込んだ後だった。
俺は門番にそのことを告げて王都内の警備を厳重にするようにお願いして不審者の魔力を追った。
俺の言葉だけで警備が変わる訳では無いだろうが、俺が不審者を捕まえたときに有利になると思ったのだ。
不審者は中央広場の誰でも利用出来る公衆井戸のすぐそばにいた。ここは1番最初にポンプを設置した井戸だった。国王様は一握りの貴族より一般大衆が利用するこの井戸を大事に考えていたのだった。
不審者は人の目が届きにくい位置に回って蓋に手を掛けた。蓋と蓋の間に隙間を作って【南洋毒蝙蝠】の死骸を投入するつもりのようだ。
だが蓋はびくともしない。例えば毒水を流し込もうとしても防御結界が弾いてしまうのだ。結界の反射機能のせいで敵対行為とみなされて入れようとした者にその毒水が跳ね返って口から鼻から皮膚から浸透するようになっている。
この男の場合は口の中にボックスに入れていた【南洋毒蝙蝠】の死骸が入ってしまってパニックに陥っていた。
「ギャー誰か助けて呉れ―!毒が毒が!」
俺は男の後ろに転移して
「毒がどうしたって?」と訊いた。
誰もいないと思っていた後ろから声をかけられてさらにパニックになる男。
「ギョッ、何時の間に!ぐじのながにどぐがどぐが!!」
どなたか警備兵さんを呼んで来ていただけませんか?この人毒がどうしたとか言ってるんですが要領を得ないので警備兵さんに対処して欲しいんで」
俺は大声で叫ぶ。
門番さんから聞いていたのか直ぐに警備兵が2名駆けつけてくれた。男は慌てて逃げようとするが、俺は男の襟首をつかんでいるので逃げられない。
俺は男と共に警備兵の詰め所に移動した。
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