第15話  ボッチ国王陛下に謁見する

翌朝王宮からの迎えの馬車が迎えに来た。4頭立ての大きな馬車だ。」それだけ道が広いのだろう。20人が楽に乗れる。

途中で冒険者ギルドと商業ギルドの代表の馬車と合流して王宮に向かった。

泊まったホテルは貴族街に有ったので一般市民の目に晒されることは無かった。


王宮に着くと王国騎士団の出迎えを受けた。俺は冒険者ギルド長のテアドロサさんと一緒に歩く。その後ろに商人さん達と商業ギルドのギルマスと鑑定士。製造ギルドの職人さん達、そして冒険者達と続いて国王陛下との謁見ホールへと進んだ。


国王陛下は後から登場するものだと思っていたら既に国王の座に座って待っていた。

予め習っておいた礼儀作法で国王陛下に挨拶して早速厄災のモンスターの死体を見せて欲しいとのことだったので裏庭に移動した。

王宮は丘の上に有って洪水などの災害時の避難場所として500m四方の裏庭が用意されていた。


「さあ、ここなら大丈夫だろう。サンダーライガー・デザースターの死体を出してみてくれ」

「はい」

頭は無くなったが全長100m全幅30m生きて立っていれば体高20メートルの巨体がそこの広場に出現する。

一斉に歓声が上がった。

「どうじゃ賢者クロード、これが伝説のモンスターなのか?」

国王様の問いにこの国の生きた知恵袋と称される賢者クロードが答える。

「はい。この巨体。黄色と黒の美しい縞模様。頭は消失していますが首から尻まで生えている黄金のたてがみ。そしてこの立派な魔石。これこそ200年前に大賢者が300人の軍隊を率いて多大な犠牲者を出して討ち取ったと言われている厄災のモンスターサンダーライガー・デザースターに間違いございません。これこの通り大賢者様が残された日記の絵面に描かれたものとそっくりで御座います」

「「「「「おおー!!」」」」」

大歓声が沸き起こった。

「カズオよ、見事であった。200年前の大賢者の業績を上回る、まさに英雄と言っても過言では無い働きをしてくれた。感謝の念に堪えないこれこの通りじゃ」

国王陛下が頭を下げた。すると集まった貴族を始めとするみんなが一斉に頭を下げた。

「国王陛下頭を上げてください。私は一介の冒険者でございます。頭を下げられては恐れ多くて困ってしまいます」

「おお、それは済まないことをした。皆も頭を上げよ」

(話の通じる国王陛下で良かった)心底そう思った。

「ところで商業ギルドマスターから井戸水を簡単に汲みだすポンプなる装置を設置して貰えるそうだが我にも見せて貰えないだろうか?」「了承致しました。それでどこに……」

その広場の王宮の壁近くにその井戸が有った。

その場所に移動するとみんながぞろぞろ着いて来る。

「これこれ野次馬は下がれ。カズオ殿に近付いて良いのは製造ギルドのメンバーと商業ギルドのメンバーだけにせい」

国王の鶴の一声で単なる野次馬貴族は引き下がった。


※※※※※※


俺はポンプ設置の前に井戸を鑑定する。

【良質な飲料水但し底にゴミが溜まっているので除去する必要あり】と出た。

「【鑑定スキル】をお持ちの方はおられますか?ポンプ設置前に

井戸の鑑定をお願い致します」

商業ギルドに鑑定士が居た。冒険者ギルド長も手を挙げた。

「おお、綺麗な水だと思っていたが水底にはゴミが堆積しているようだな」とギルマス。

「クリーン魔法で清掃作業致しましょう。どなたかクリーン魔法を使える方はいらっしゃいませんか?」と言ったのは商業ギルドの女性鑑定士だった。

そこで俺は

「俺が使えるよ。でもその前にストレージに収納してからどれほど溜まっていたかを確認しましょう」と言ってゴミを収納してからもう1度井戸を鑑定してもらった。

「ん、なんか水位が上がった気がするな」

「これが今収納したゴミです」

俺は、収納したゴミを地面に出して見せた。木の葉や紙くずの他に大量の砂が混じっていた。

「小石と小石の隙間にこの砂が溜まって水が湧き出しにくくなっていたのですよ」

「本当、前よりももっと澄んでいますね水位も上がっています」

「このように井戸にポンプを設置する前に鑑定したり清掃したり場合によっては浄化魔法で消毒する必要があります。王都に来る前に寄ったムハマドの町では毒を持つ【南洋毒蝙蝠】の死骸が入っていて住民が病気になっていました。今後その様なことが無いように井戸の上には屋根を。井戸自体に重くて頑丈な蓋を設置して貴重な井戸水を保護する必要が有ると思います」

と提言した。その後この世界でも製造可能な鋳物製の手押しポンプを選んで、井戸の水深に合わせた給水管を取り付けて利用する人が操作しやすい位置に穴をあけた蓋を設置してその穴に給水管を挿入して、ポンプ本体を設置した。今回は給水管に塩ビ管を使ったが100台分の塩ビ管2mを500本、延長用接続部品、給水管を本体に接続するバルブソケット、塩ビ用接着剤、水漏れ防止用のシールテープを提供しておいた。これがなくなったら金属などでパイプを自力で開発して欲しい。その他にも本体を蓋の板に取り付ける時のナット締め付け用のスパナ、塩ビパイプ用ノコギリなどの必要な工具類を提供した。

「このポンプは予め水が入っていないと水が出ないので水を用意して置いてここから水をたっぷりと入れてください。これを呼び水といいます。もし使っていて水が出なくなったときは呼び水を確認して入れてください」

そうしてポンプの吐出しの下に木桶を置いてハンドルを上下させると水が出てきた。

「わー!!凄い凄い」「これは便利だ」

様々な賛辞が寄せられた。

俺は製造ギルドの職人さんにはもう1台同じポンプを用意して消耗品である部品を大量にプレゼントしておいた。構造図と説明書を翻訳して置いた紙を手渡した。

「このポンプは分解して構造を確認して製造ギルドで作れるように頑張ってください」と言った。

「有難い有難い、あんたは技術の神様だ。何としてもあんたの期待に応えてみせよう。製造ギルド長として最大の謝意を捧げよう」


 ここまでのポンプ設置の手順は以下の様なものだった。

 この井戸は深さ5m位だったので水底から1m上に給水管の端が来る4mのパイプ用意した。ポンプ本体を小型の5㎝厚さの給水管の穴とボルトの穴をドリルで穴を開けた台板にボルトナットで固定して、給水管を裏側から本体に接続して人の手を借り管を井戸の中に入れて台に固定したポンプを、予め井戸の蓋に開けて置いた給水管を通す穴に通し井戸の蓋に取り付けて置いた4本のボルトに合わせて設置して、慎重に対角線ごとにナットをゆっくりと少しづつ締めていく。この時底の方のボルトの頭は空回りしない様に細工しておいたので、上部のナットをスパナで締め付けていく。

ポンプ本体のハンドルやらピストン弁やらの部品を組み立てていく。

 最後に呼び水を入れてハンドルを動かすと排水口から水が勢い良く出て来た。

「わー出た出た」「凄い凄い」

 歓声が上がった。俺はあまり力の無さそうな小柄な女性にハンドルを上下させて試してもらった。

「あんまり力を入れていないのに、楽に水を汲めます。夢みたいです」

すると人々は代わる代わるポンプの操作を楽しんでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る