第9話 ボッチ天災級モンスターと遭遇する

三日目朝食は冷凍チャーハンを御馳走した。スープはインスタント野菜スープだ。米の御飯に慣れてもらう。夜はダンジョン雉の唐揚げを卵でとじて唐揚げ親子丼を振る舞うつもりだ。

朝食の後はトイレ腕輪の使用確認でスッキリして出発した。


昼過ぎに反対方向から走ってくる商隊に出くわした。

こちらの商人さん達と顔馴染みなようでどうしたのか尋ねると

「商業ギルドによるとカイサの町にサンダーライガー・デザースターが現れたので捲き込まれない様に逃げているのだという。

何そのプロレスラーみたいな名前!

ナビちゃんから貰ったこの世界の知識で調べたら

頭が雄ライオンで、身体が虎の巨大なモンスターで体高20m、体長100m。幅30mの巨体の全身に静電気を纏っていて周囲1㎞に雷を落しまくって時速70kmで走り回るのだという。近接戦には向かない相手だ。厄介なのは【サンダーブレス】で超巨大な火炎放射器の様な攻撃を口から放ってそこら中を雷の放電で火災を起こして生き物を感電死させて真っ黒焦げにしてしまうのだ。


リラさんがどうするかと雇い主のボスのゲンズさんに尋ねる。

「今回の荷物を待っている人たちがいる。町が伝染病に侵されていてその特効薬のポーションを、命を懸けてでも絶対に届けてやりたい。急いで行けばモンスターと出くわす前に横切れるかもしれない。それに掛けたい」との答えが返って来た。


「それなら俺が商隊をすっぽり覆う強力な防御結界を張っておくよドラゴンが群れでぶつかっても壊れない自信が有る。まだ実際にぶつかられたことは無いけれど。リラさん、試しに【紅の翼】の全員で俺を攻撃して見てくれないか?」

「おう、判った。シャイーまず魔法で攻撃してみな」

「うん。インフエルノ!」

凄い威力の魔法だと判るが結界に傷一つ付いていない。


「成る程。魔法は効かないんだな。次ユミリ、矢を放て」

弓矢の子は名前もユミリと言うんだな。流石Bクラスの矢の威力は盗賊団のそれとは段違いの強さだがやはり傷は付かない。

「ふむ。ではシノブ私と同時攻撃だ」

「了解」

双剣使いの子はシノブと言った。初めて声を聞いた。思ったより可愛らしい声だった。

声に似合わず素早く力強い攻撃だ何度も同じところを切りつける。

リラさんは大剣でガキ――ンガキ――ンと叩き付けて来る。どちらの攻撃も通用していない。

「うむ、確かにこの結界は凄い。王国軍の魔法使いが張った結界の何十倍、いや、何百倍も強いかも知れないな」

「これはとても頼もしい。では急いでムハマダの町に行きましょう」

俺は馬達に奇跡の水を飲ませて疲れを癒す。各馬車を重力魔法で浮かせて、今までの倍のスピードで走らせた。俺は先頭の御者台の横に座らせて貰って、道の凹凸をならしながら馬車が壊れない様にする。


だが、【厄災】の二つ名を持つモンスターの進撃は想像を絶するものだった。遠くの荒れ地に稲光が見え、雷鳴がしたと思ったら

急速にこちらに向かって近付いて来る。


速い!巨大な身体の上空100mに雷雲が浮いていて本体の動きに合わせて着いてくる。時速70㎞は伊達じゃない。ぐんぐんこちらに近付いてくる。奴が通った後は木々は燃え地面は真っ黒になっている。

「まずいなこのままだとサラテインの町に着きそうだ。町が一つ無くなってしまう!その後は……恐ろしい」

商人のゲンズさんが呟いた。

「ならばここで討伐してしまおう」

俺は奴の進行方向の横方向に商隊を結界ごと転移させた。

これで商隊が奴の雷に巻き込まれることは無いだろう。

奴と俺との距離は2㎞。魔力矢が届くかな?届いても効くかどうかは判らないがやってみるしかないだろう。


狙うはサンダーライガー・デザースターの両目と眉間。

俺は10本の魔力矢を1本に付き100万の魔力量で放った。

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