6月17日(月)

 ミライさんから「僕を〈境界〉に連れて行かない宣言」をされてから気付けばもう五日経っていた。土日を挟んでいるのでその宣言から三回目の調査だった。

 調査についてはこれまでと変わらず、放課後の情報共有や見回りで〈境界〉の場所を割り出そうとしている。まだ次の〈境界〉は見つかっていないが、見つけたとしても彼女は一人で行ってしまうのだろうか。彼女が〈境界〉に行くのを見送ることになるのだろうか。

〈境界〉に入れるという特性を活かした協力なのに、それでいいのか?

 彼女の態度は以前と変わらない。まるであんなことなどなかったかのように。

「……」

「……何かあった?」

 歩道橋の上でどこか一点を見つめるミライさんに声をかける。彼女は風でなびいた髪を抑えながら、一拍置いて「いえ、何も」と呟いて先に進んでしまった。

 僕は彼女が見ていた方を見る。

 すぐ下の道路には車が絶え間なく駆け抜け、マンションや団地が立ち並ぶ。頭上では高い高い青空、遠くの方に低い灰色の雲の塊が数点。夏の空だが、雨の気配もある。

 彼女は何を見ていたのだろう。

 この日はいつもより早めの十七時半に解散となった。

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