第8話 最終決戦①
水のソリは、火山活動の活発な焼け野原で止まった。火山の女神、ラキアスがその場で不敵に待ち構えていたから。
「なるほど、強力な同伴者を連れてきたというわけじゃな」
忌々しい、というようにラキアスは吐き捨てる。水のソリは本来の姿に戻った。精霊アリアドネの母なる憂いの表情が、ラキアスの怒りに拍車をかける。そして、この場所はラキアスの「巣」でもあった。
焼け野原の地面から、人間の体と同じくらいに巨大な手が数万本と現れた。手は灼熱とはっきりわかる赤銅色をしていて、ジンの体をわしづかもうとする。
ジンはすんでのところでよけると、アリアドネに合図をして、彼女をユニコーンの姿に変化させる。
ジンを乗せたユニコーンは白いツノをかかげて高い声でいななく。するとどうだろう。辺り一面、吹雪の野原と変わった。灼熱の巨大な手は次々と、精霊の力を帯びた雪に「浄化」されて消える。
「水の精霊と、氷属性エルフの組み合わせか。確かに厄介じゃ」
ラキアスは少し悔しそうに笑うと、額の第三の目を大きく見開いた。
ユニコーンめがけて、灼熱の炎を放つ。
額のその目から放たれるそれは、ユニコーンの心臓部を確かに貫いたのだ。
「アリアドネ!」
ジンは唇を噛み締めて、雪の降った地面に横たわったアリアドネの患部を吹雪を産んで冷やしてやる。幸い、水の精霊はこの程度ではやられない。すぐに傷を自己修復させて、立ち上がる。そして、本来の女性の姿に戻って、言った。
「わたくしを剣か槍に変えなさい」
優しくも厳しいアリアドネの声に、ジンは心打たれていた。
「なぜじゃ。上位精霊のアリアドネ。お前ともあろうものが、たかだかエルフと、なぜやすやすと契約した」
ラキアスは悔しげに言うと、その身を本来の龍の姿に変化させた。両の翼だけでも十メートルはあろうか。黄金色の巨大なその姿は恐ろしくも美しかった。
額にある第三の目も体に合わせて巨大化している。
水の精霊、アリアドネはジンの耳元でささやく。
「あの目。あの目が女神の弱点よ。頑張って、ジン」
そのアリアドネの印象に、十七歳ごろのミユリの面影を感じて、ジンはアリアドネを見る。
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