第6話
若林恵は涙を拭いながら、重い口を開いた。「確かに、私は父に対して強い恨みを持っていました。でも、彼を殺したのは私ではありません。誰かが私をはめたのです。」
香織と涼介は互いに顔を見合わせ、新たな展開を予感しながら、若林の言葉に耳を傾けた。
「誰かがあなたをはめた?詳しく聞かせてください。」
香織は静かに促した。
「実は…」
若林は深く息を吸い込み、話し始めた。
「ある日、匿名の手紙が私のもとに届きました。その手紙には、父が私たちを捨てて新しい家庭を築いたことへの怒りと恨みを利用して、彼を脅迫する計画が書かれていたんです。」
若林は手紙の内容を思い出しながら続けた。
「手紙には、父に近づくために特別に用意された万年筆を渡せば、彼の信頼を得られると書かれていました。私はそれを信じて、父に万年筆を渡しました。でも、万年筆に毒が仕込まれているなんて知らなかったんです。」
涼介は眉をひそめながら尋ねた。
「その手紙はまだありますか?」
若林は頷きながら立ち上がり、リビングの棚から手紙を取り出して二人に見せた。手紙は確かに匿名で、若林を巧みに操る内容が書かれていた。
香織は手紙をじっくりと読みながら、
「この手紙を書いた人物が真犯人かもしれませんね。私たちはこの手紙の筆跡を調べる必要があります。」
と言った。
涼介も手紙を覗き込み、
「そして、この手紙の送り主が誰かを突き止めることが重要だ。若林さん、手紙が届いた時期や、他に不審な出来事があったかどうか、何か覚えていますか?」
と尋ねた。
若林は思い返しながら、
「手紙が届いたのはちょうど父との連絡を再開し始めた頃です。他には特に思い当たることはありませんが、最近、父のビジネスパートナーだった山下さんが私に接触してきました。彼は私に、父に対する計画を進めるように勧めてきたんです。」
と答えた。
香織は涼介と目を合わせ、
「山下さんですね。彼が真犯人の可能性が高いです。彼についてもっと調べる必要があります。」と結論付けた。
「若林さん、私たちがこの件を調査している間、あなたも自分の身を守るために慎重に行動してください。何か新しい情報があれば、すぐに私たちに知らせてください。」
涼介は真剣な表情で言った。
若林は静かに頷き、
「ありがとうございます。私も父のために真実を知りたいです。」
香織と涼介は若林の家を後にし、次の調査対象として山下の行動を追うことに決めた。門司港の夜は再び静寂に包まれ、二人は新たな証拠を求めて動き出した。
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