The Noble Snake Glare

 お昼時間、私と美貴と桃香の三人で教室で昼食を食べていた。私と美貴は適当に買ってきたパン、桃香は家で家族が作ってくれたお弁当である。

 私はその中で朝の話の続きを始めた。


「そう言えば、このヤバい写真やもっとヤバい写真を実子様はご覧になったのかな?」


「うーん、この写真を見たかはわからないけど、他の写真は見てるんじゃないかな?」


 山のお社が家だから見てるかも?と桃香は言った。


「んー放課後に『常盤の庭』に例の写真持っていけばいいんじゃねー?」


 それでコレ見ましたか?と聞く、と美貴が言った。


「じゃあ放課後『常盤の庭』に行こっか」


 三人の中で放課後に『常盤の庭』に行くことが決定した。














 お昼に三人で決定した通りに放課後にお社に向かい実子様に訊ねた。

 お社に来た時点で龍野先輩が睨んで跳んできて、実子様に今日は何を持ってきたんだと溜息混じりに問い質されるところから始まることになった。


「――という訳でして」


 先輩等と話すのにも慣れていて物騒なモノの生産者である桃香が写真の入った封筒を出して弁明していた。


「いや、私は写真は見てないな。昨夜珍しくお姉様が帰ってきてたり何かあったらしいのは知ってるが」


「そうでしたか」


「昨夜、社に斉木が来てたのも知ってたがそういう事だったのか」


「一応、二人に見せておきたかったので一番マシな物を後でお焚き上げして貰うことを前提で一枚だけキープして持ってきたんです。それで実子様は御覧になったのかどうかと言う話になりまして」


「それで物騒なモノを持ってきたと」


「えーと、御覧になりますか?」


「見よう」


 そう言うと龍野先輩が動いた。

 龍野先輩が桃香から封筒を受け取り中の心霊写真を取り出しピクッとと反応するものの少しして心霊写真を実子様に渡した。

 実子様は顔色一つ変えずに心霊写真を受け取る。

 顔にかなり近付けて見ている。


「ほぉ……」


 龍野先輩が引き出しから虫眼鏡を持ってきて実子様に渡す。


 「ありがとう」


 そう言って受け取り実子様は写真をローテーブルに置いて虫眼鏡で見始める。


「実子先輩的にどうですかー?」


 暫くして美貴が口を開いた。


「確かに呪い的な物騒さはそこまで無いが……絵面は物凄く物騒というかここまで来るとダサい飾りみたいになってるな……」


「あー確かに鯉を目立たせたいのかそうじゃないのかわからない感じになってますよねー」


 確かにと美貴は実子様の言葉に顔を立てに振っていた。

 実子様は虫眼鏡で心霊写真を見てくつくつと笑っていた。

 龍野先輩は微妙な顔をしている。


「確かお焚き上げって言ってたな、町の社にどうせ渡すなら山の社で引き取っておこう」


 笑いながら実子様は側に置いていた自分の鞄から出して御札を出して言った。


「あ、はい。実子様が持っていく分にはパパも納得すると思うので」


 こういうときでも桃香は自分の父親の事をパパって言うんだなとかどうでもいい事を思ってしまう。


「私からも後で引き取って処分したと言っておこう」


 そう言って御札は心霊写真を入れていた封筒に一旦入れられる。

 心霊写真はまだローテーブルで皆の目に晒されている状態である。


「まだ虫眼鏡で詳しく見たい人は居るか?」 


「少しだけ私も宜しいですか?」


 私が手を上げて実子様に申し出た。


「じゃあ、ハイ」


「ありがとうございます」


 そう言って虫眼鏡を受け取り写真を此方に寄せてから見る。


「…………ありがとうございました」


「もう大丈夫?ゆっくり見たほうが良いんじゃ?」


「いえ、朝見て気になってたところを大きく見たかったので、それが出来たので大丈夫です」


 そして暫くして手を伸ばしてきた龍野先輩に虫眼鏡を返却した。

 

「……そう」


 それなら良かったと実子様は言った。

 そしてローテーブルに置かれた心霊写真を実子様が御札を入れた封筒にしまい、自分の鞄に更にしまった。

 私と実子様の距離的に裸眼の実子様からは私の顔ははっきりとは見えてない筈である。

 それなのに私がナニかに気付いたことにおそらく実子様は気付いている。


「忍ちゃんは後でお話に付き合って貰って良い?」


「あ、ハイ。いつ頃にしますか?」


 それでも今詮索しないで居てくださる事に私は安心した。


「すぐそこの町の社に行くときにでも」


 もれなく龍野先輩はセットだろう、体の弱い実子様の面倒を見てる付き人的存在だから当たり前であるが。


「あ、じゃあ今日の『常盤の庭』はお開きですかね?」


 桃香が鍵って実子様が管理してるんですよね?と質問する。


「今日のお社の鍵締めは奥で転がってる空秀と空秀を迎えに来る貴子に頼むから、それまでなら居られるし好きなタイミングで帰って良いよ」


 貴子とは実子様の同い年従姉妹である政理貴子様の事である。

 空秀は一応その付き人というかフォローをしているらしいが、今回のお迎えの様にどっちが面倒を見てるのかわからないような事がよく起こってたりする。

 後は顧問の先生も鍵の管理をしているらしい。普段は日が暮れた後あたりに戸締まりの確認だけしに来るらしい。


「え、居たんですかー空秀先輩!?本当に気付きませんでしたー」


「ちょっと、声大きい!!」


 また美貴が大声を出して桃香が注意をしていた。

 そして全員の視線が空秀先輩に向く。


「……起きる気配ないね」


 転がってる空秀は身動みじろぎもしなかった。


「メールで貴子に戸締まりを要請すれば終わりだから気にしなくていいよ」


 どうせここに転がってるし、と空秀先輩を指して好きにして良いと桃香と美貴に向かって言った。

 龍野先輩が携帯電話を弄っている、手もデカいので普通のサイズの携帯でも小さく感じる。


「メールしておいた」


 貴子様にメールで要請していたようだ。

 因みに貴子様は生徒会の仕事中で書記をしてるらしい。


「あーいえ、私達は元々実子様に心霊写真を御覧頂く為だけに来たので用事は済んでるのでもう帰りますよ」


 町のお社にも行く必要無くなりましたし、そう言って桃香はバッグを持って立ち上がった。

 美貴もソレに倣う。

 そもそも来ただけでバッグの中身を出したりしていない美貴はそのまま持ち物確認せずにバッグを持って終わりである。


「そう、二人共この饅頭だけ持って帰っていって」


 そう言って黒糖饅頭の入った包みを二人に一つづつ渡した。


「ありがとうございます、有名な和菓子屋さんのですね、コレ」


「わー、ありがとうございまーす!!」


 桃香と美貴はそう言ってそれぞれ饅頭を受け取った。


「では、実子様ありがとうございました龍野先輩も写真をよろしくお願いします。忍はまた明日、先輩達に失礼のないようにね」


「祝先輩ありがとうございましたー、シノちゃんと龍野先輩もさようならー」


「写真は責任持って管理するよ。では桃香ちゃんと宮島さん、さようなら」


「では、二人共また明日」


 そして二人はお社から去っていった。

 私と実子様はそれぞれ声をかけ、龍野先輩は無言で手を振っていた。

 










「政理から了解の返事が来た」


「では、行きますかね」


 美貴と桃香がお社から出てから少し経った頃、龍野先輩がそう言って携帯の画面を実子様に見せる。

 すると実子様も鞄を持って立ち上がった。

 私は振り返って空秀先輩を見る、相変わらず死んだように眠っている。


「寝ている空秀先輩だけを鍵開けっ放しでお社に放置して大丈夫なんですか?」


 誰か悪い人とか来たら大変なのでは?と私は実子様に訊ねた。


「暫くしたら、お迎えが来るしお社は良くも悪くも土地神が干渉してくるところだから、悪さしようものなら犯人は大変な事になるだろうよ」


「そ、そうですか……」


 実子様は他人事の様に言った。

 すでに何かしら起きたことがあるようだ。


「じゃあ、私達も町のお社に行きましょう」


 そう言われ私も鞄を持ち立ち上がり寝ている空秀先輩以外はお社を出ていった。

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