The Wonderful Photograph

 学校のクラス教室で桃香と美貴に再会した。

 桃香の机に美貴と私は集まる。


「二人ともおはよう、写真の件なんだけどねぇ」


 桃香が気まずそうに口を開いた。


「あ、昨日の写真?見たい見たい!!」


「……どうしたの?」


 美貴が朝から元気である。

 私は桃香の表情的に嫌な予感がした。


「ごめんお焚き上げに持ってかれちゃった」


 桃香は顔の前で合掌してそのまま頭を下げた。

 全部心霊写真になってしまったらしい。


「ふぁっ!!」


 美貴は朝から目を大きく開けていた。


「いや、うん頭は上げて。あー……そう言えば、桃香の異名あったわね」

 

 左手の指の方でおでこに手を当てながら私は言った。

 心霊写真製造機、中学時代の修学旅行のとき桃香が持ち込み可能の使い捨てカメラで撮ると高確率でナニかが写り込むと話題になっていた。


「その話はやめて」


 ガチで嫌な顔をされた。

 否定自体はしないのは事実には違いないからだろう。

 フィルムカメラで撮るとナニかがよく写るのは本当らしい、さらにデジカメでもたまに起こるとか聞いたことがある。

 良いモノも悪いモノもどちらも写るらしい。


「一応証拠として一番マシで安全な写真を持ってきたんだけど……後でこれもお焚き上げに持っていくことになってるから見られるのは今日で最後よ」


 桃香はげんなりとした顔をしながらそう言って鞄から封筒を取り出し例の写真を見せてくれた。

 その写真には手型が大小様々でびっしり写ってて鯉を目立たせているかのような構図になっていた。

 逆にここまで自己主張の強さというか、鯉を目立たせるスタンプみたいになってて面白さを感じてしまう自分が居た。

 他にも何ヶ所か気になる部分はあるが今はやめておく。


「え、 えーと、コレ手に取って大丈夫?」


 写真を見て美貴は言った。


「写真は手に取って近くで眺めても良いよ。指紋つけないようにね」


 そう言って桃香は写真を美貴に渡した。

 そして美貴は写真に顔を近付けた直後、桃香の机に落とすように置いた。


「ひぇっ!!……これがマシって本気マジ!?」


「ぶふっ!?」


 美貴の言葉に止めを刺された気がした。


「……忍は関係ない所で笑ってない?」


 美貴のソレ面白い?と桃香に呆れた顔をされた。

 

「い、いや、写真見ててもここまで来ると清々しいなって思う部分もあるよ。あ、私にも写真を間近で見せて」


 私は慌ててしどろもどろに言った。

 ついでに目に近づけて見たいのでに訊ねる。

 このままだと私がつまらない事で笑っている人間になってしまう。

 桃香は別の意味で取ったようだ。


「それでね、パパがマジヤバい認定してたのはパッと見はわからないモノとかだったんだよね。何ていうかよく視ると、ナニかの紅い眼が見えるとかそう言う間違い探しみたいなの。そういう写真を眼鏡を外して遠くから注視して見ると写真からヤバいオーラが立ち昇ってるそんな感じのヤバい奴なんだよ」


 それらは山のお社に処分してもらうと桃香は言った。

 桃香はとんだ呪物を作ってたらしい。

 そんな事を聞きながら、写真を手に取り手の部分や池の縁の部分などを注視する。

 こういうときルーペが欲しくなる。


「えー怖ー」


 そう言いながら面白そうな顔をしてる美貴が居た。


「本当に危ないから止めようね。お寺か神社に相談だよ」


 近くだと町の社が相談やお焚き上げをしてくれるはずだよ、と桃香が真剣に注意やアドバイスをした。

 因みに町のお社は祝家の分家の姫川家が運営している。


「ん……?あれ、町の方でもやってくれるのにわざわざ山に持っていったの?」


 私は写真のお焚き上げ関連とかは正直知らないので桃香に訊く。

 そして私は写真を桃香の机の上に戻した。


「うん、パパが慌てて山にアポ取って持っていってたよ」


 多分町の社に持っていっても山に何枚か送られてたと思う、と桃香は言う。


「えー…そんなに危ないモノだったの!?」


 怖ーいと言いながら美貴が私の両肩を掴んでがくがく揺らす。

 おそらく美貴の言葉を聞かないと強請ゆすってる人にしか見えないと思う。


「ちょ、揺らすのやめて視界がぐわんぐわんする」


 割と真面目に目が回ってきた。


「美貴、そろそろやめないと忍が目を回すよ」


「え、あ、ごめん」


 桃香の言葉を聞いて美貴は私からパッと目を離した。


「ふらふらする」


 関係ない所で一時的な体調不良起こしてて自分自身困惑である、机に手をついて体制を保つ。


「ゴメン、シノちゃーん」


 両手を合わせて美貴が私に謝ってきた。


「美貴は本当に身体が大きいんだから小さい私だと振り回されるのよ……今回は良いけど」


 気を付けて、と私は美貴に言った。結構ふらふらする。


「ゴメーン、ありがとう」


 そう言って美貴は元通りの顔をする。


「えーと、そう言えば他の写真はどんな風になってたの?」


 机から手を離し私は桃香に訊いた。

 すると桃香はうーんと少し考えてから口を開いた。


「この写真と似た感じの物だったり、赤と白のグラデーションで写ってるはずのモノが見えなくなってたり、後はお地蔵様も凄いことになってたりしたかな……」


 全部パパが山のお社に持って行ったよ、と桃香は言った。

 お地蔵様はどうなっていたのか素直に気になる。


「あーそう言えば、姐さんはそのヤバい写真見たのかなー?確かモモちゃん報告書書くって言ってたよねー?」


 それを聞いて昨日の電車での依香様との再会を思い出しピクッと動いてしまった。

 桃香が私をいきなりどうしたの?という顔で見てきた後、美貴に答えた。


「それについてはパパが写真持っていったとき珍しく山のお社に兄姫様もいらっしゃったって言ってたから引き渡しの場に居たみたい。だから事情も知ってるし山のお社にフィルムも渡してるってさ」


 だから見たんじゃないかな、と桃香は言った。


「へーそうなんだー、見られたなら良かった」


「依香様がどんな顔してヤバい写真を見たのか気になるな……」


「それはそうねぇ」


 そんなこんな話していたら、朝のチャイムが鳴り、私と美貴は慌てて席に戻る。

 そうして朝の会話は終わったのだった。





 私はあの写真をルーペで詳しく見てないのではっきりとは言えないが手型の形があまりにもバリエーションがあったことと池の縁にあった黄色がかった白い小さな塊が気になっていた。

 桃香はこの事に気付いているだろうか、いないのだろうか。

 どうしようもなく不意に私は実子様に相談したくなった。


 













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