深山のお寺
門を通りそこから本堂までは石畳があり隙間や積もった土ぼこりから多少生えているていどだった。またその周辺も玉砂利があったようでそこも木が生えだしていない上にある程度草も疎らでマシだった。
お寺の建物もやはり崩れてはいないだけで木材が相当傷んでいるようだった。
お寺の敷地をここから見回した感じ墓地が併設されて無いタイプのようである。
探せばあるのかもしれないが、それぞれの家にお墓があるタイプなんだろうと思う。
私以外の人は建物の中に何があるのか気になるようで本堂の中を皆で外から見ていた。
本堂は閉ざされていた筈だけど既にこじ開けられていて中が見える状態になっていたのだ。
私も本堂へ近付いて覗き込む。
見える範囲では仏像が置かれていたであろう場所が空いていて、他の場所も含めて破損して散らばった木材などで散らかっている。
本堂も例外なく崩れかけているようだ。
「流石に廃寺になったときに仏像とかは引き取られてるよねー、それにわかりやすく珍しいものがあったりしたら盗られてるか」
当たり前だけど、と言いつつトイコさんは建物内に入っていった。
それを見て美貴と紫里さんも入ろうとする。
「紫里と美貴は危ないから入っちゃダメよー」
そう言ってトイコさんは建物に入るなと釘を刺した。
「えーずるいー」
「姐さんだけ良いなー」
「あぁそうだ、忍ちゃんにコレ渡しておくわね」
紫里さんと美貴のブーイングを尻目にトイコさんは私にケースごと分厚い書類束を渡してきた。
「先に池まで向かってて。何かあったら大声で呼んでね」
そう言ってからトイコさんは建物の奥へ向かって行き私達からは見えなくなった。
「だそうですよ、紫里さんも美貴も諦めて例の池に行きますよ」
桃香が二人に呼びかけた。
「えー仕方ないなー」
「しゃーなし行くかー」
「ハイハイお池に行きますよー」
諦めた二人を本堂から遠ざけて、石畳はおろか玉砂利からも外れた背丈の高い草が大量なかろうじてわかるような獣道へ進んで行った。
私も書類を読みつつ三人についていく。
この廃寺にやってくる人間は河童の棲むと言われる池を目当てにやってくるからここもたまに踏み固められて獣道としてわかるようになっているのだろうと思った。
「……このお寺って水子供養をしていたお寺なんだね」
私がお寺についての書類を読みながら前の三人に話しかけた。
「え、あぁ、そうね。確かお地蔵様のある池があってそこが今回の目的地なのよ」
事前に調べたことで少し知っていた桃香が答えた。
「なるほど……」
「ねぇ、水子供養って何ー?」
美貴が訊いてきた。
まぁ、詳しく知っている私の方が普通ではないのだろう。
「えーと、生まれてくることが出来なかったあるいはすぐ死んじゃった赤ちゃんを弔うのが一般的な水子供養なのかな……?」
桃香はそう言って私の方を見た。
「だいたいそんな感じかな。あと、お地蔵さんは親より先に死んで彼の世で苦しむ子供を導いてくれたり、生きている子供や妊婦さんを守ってくれたりしてくれる菩薩として有名だから、水子供養と言ったらお地蔵さんて感じはする」
他にもあるけど、と私は言った。
この前お世話になったお地蔵様の別の顔を見ているようだ。
でもそれは紛れもないお地蔵様本来の顔である。
だから、池の
ただ、池に近づくにつれ夥しく視えるものが見慣れたものが多いのが気になる。
それ以外も居るけど、確かに視えない方が幸せなのはわかった。
桃香が眼鏡をかけているのもそういうことなんだろう。
私は視たからどうというわけでもないのでそのままだが、紫里さんが教えてくれたおまじないは視なくて良い時に使うのだとこの後まさに思い知らされることになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます