第14話 初日から寝不足
「今の魔女の世界には、大きく分けて2つの組織がある。」
ヴェネーラさんは煙草を吹かし、でっかいおっぱいを椅子の背もたれに乗っけながら床に正座する僕へそう言う。
「んで、お前を殺したい連中が所属してんのが『自治派』で、お前が嫌いで仕方ないけど多分殺しはしないのが『協会派』。さっき襲ってきたのは『自治派』の魔女だな。」
「それじゃあ、お師匠様は『協会派』ってことですよね?」
一応僕の保護をしているおっぱい様は『協会派』ということだろうと思いそう尋ねる。
「いいや、私はどっちにも属してねぇ。まあ、こいつのせいで今は『協会』寄りではあるけどな。」
憎たらしそうに首のチョーカーを指してヴェネーラさんはそう返す。
「無所属ってオッケーなんですか?」
当然ながら、魔女の世界における掟やコミュニティが一切分からない僕に、
「別に問題はないぜ。無所属のデメリットは、後ろ盾が無いってだけだからな。私みてぇに強さも美しさも最強で最高な魔女に派閥なんか不要ってことよ。」
師匠はそう答え、焼酎をグビっと飲んだ。
「伝統を捨て、時代に合わせ人間と共存しながら少しでも多くの魔女が生き残るべきと考えてんのが『協会派』。人間と魔女は完全に別の生物として人間を隔絶し、魔女は魔女だけのコミュニティで伝統を重んじ生きるべき、その為には戦いも厭わない、てぇのが『自治派』だ。」
ヴェネーラさんの説明にふと疑問を持つ僕。
「でも、魔女って女しかいないんですよね?血を繋ぐなら男…それこそ人間と共存が当然ですよね?」
伝統がなにか知らないが、生物である以上雌雄揃わなければ子孫は残せない。
「昔、魔女がまだ自由に生きてた頃は、男に催眠魔法掛けて種だけ搾ったら殺してたこともあってな。」
「サキュバスじゃん!!」
エッチなイメージの夢魔は魔女の悪行だったらしい。
「まあ、その頃でも普通に魔女であることを隠し、人間として生きてるやつもいたし、結局、魔女の伝統なんざねぇわけで、私から言わせりゃ、自由に生きんのが魔女なんだけどな。」
元も子もないことを言ったヴェネーラさんは空中に手を突っ込み、酒瓶を引っ張り出す。
「もっとも、自由に生きれるほどの力を持った魔女は、私しかいねぇけどな。」
ケケケ、と意地悪く笑う彼女こそ、本当の魔女なんだろう。
「飲み過ぎですよ。」
そう心配する僕に、
「夜は魔女の時間だ…」
そう呟いて微笑み、飲む手を止めないヴェネーラさん。その呟きで思い出す。
「明日から学校だった!!」
現在時刻3時半。
転校初日から寝不足が確定した僕であった。
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