第2話 アンドロイドに責められて
「いやらしいことなんて、だいきらいだ……」
星は18歳の青年だった。
彼の生まれは特殊だ。
まず、父親は「愛人」と交わり、その性液を採取する。
そして、今では希少となった妊娠を望む、人間の女性へと、その性液は届けられ、病院で人工授精される。
いつの頃からか、世界的に女性が減少したのもあるが。その女性達を男性が品定めするような社会になってきた。
不快に思った女性達は「女だけでも生きられる世界の実現」を目指した。
しかし、やはり男性、女性。
それぞれの協力なしには人類は繁栄できない。
それに、全く男性と関わりたくない、という女性ばかりではなかった。
優待してもらえるのは嬉しい。
でも、望まないセックスや妊娠中のストレス、金銭的な悩み、悪阻も嫌。
相応の対価があるなら、「男性」と「協力」してもいい。
そういう主張の女性もいた。
その中には、星の母親にあたる「女性」もいる。
しかし、男性側は女性達が心と体の門を閉ざし、コロニーに籠ると。
精密なアンドロイドの研究に力を注いだ。
それらは各国の〈ジョセイ〉をかたどった、研究者の情熱とスポンサーの愛情と愛欲の結晶だった。
モラルは当然追求された。
女性を一体何だと思っているのか。なんの対象として捉えているのか。こんなことが許されるのか。
また、裕福な暮らしやお金欲しさに、〈アンドロイド経由〉で妊娠する女性達は時に攻撃の対象ともなったが、慈悲深い者たちは子供を産むこと、その子が何不自由なく育つならば神への冒涜でも、倫理的に許されなくても、生まれた子供は祝福されなければならない。論争は広がるばかり。
星は自分の母親のことは知らない。生まれた時に会っているのだろうけれど、そんな記憶も記録もなければ父に聞いたことはない。
しかし、父の〈愛人〉は知っている。
もうとっくに機械としての寿命を迎えたが、パーツを少しずつ交換すればまだ「使える」。動くらしい。星の父は女性アンドロイド開発研究の一員だった。
高齢ではあるが、いまだに研究に参加している。
そして、
「Englandはどうだ、Franceは。どれならいい」
星は18歳になった頃から、日夜。
性的興奮受容アンドロイドから責苦を受けていた。
父の狙いは「後継者」の「後継者」だ。
「星、お前が望むなら本物の『女』に会わしてやらんこともない。だが、私の息子なら、わかるよな?」
父はアンドロイドを駆使して、星を誘惑し、快楽からくるソレで、優秀な孫を望んでいるのだ。
「お父さん、やめて、こんなの、ああっ」
近頃の父のお気に入りはJapan typeで豊満な肉体や、星と変わらない年代、2、3機で裸体で迫ってくることもある。
赤ん坊の吸啜反射などの知識はあるが、それより強い噛むようなキスに、星の白い体が赤く、花びらを散らされていく。
悶えて耐える星。
「ああっ、あ、はぁあ!」
やめて、おねがい、ああっ、星は助けとも言えぬ肉欲の叫びをあげていた。
「こんなの、学校にばれたら、父さんは危ないんじゃないの……? ……っ、ん!」
父はめくるめく美しい光景を前に表情を変えずに。
「言えるのか? このことを。内気なお前が」
父はただ、視線だけを向け続け、星の辛苦など気にも止めず。
「すべては、人類とアンドロイドの未来のため……」
星は、それでも日夜耐えていた。いままで、一度も屈したことはない。
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