君の稼働は心臓の音

明鏡止水

第1話 アンドロイドからの

ある日空から女の子が落ちてくる、落ちている、出会う、再開する。


それは、僕にはありえない。

なぜなら。


「星さま、お茶をどうぞ」


割烹着を着た和風アンドロイドが、テーブルの席についた僕に煎茶を煎れてくれる。


僕はその、程よく手のひらを温めてくれる湯呑みを手にしてほっこりとしながら。

味わい深い液体を飲む。


……おいしい。


そんな僕の表情の差異や嚥下の様子、筋肉の緊張のほぐれなど、このアンドロイドは観察していることだろう。


僕は、人間の女に、人生で一人も会ったことがない。そのはずだ。


父がやってきた。


「星。どうだ。もうすぐ『彼女』も時が来る。どうだ、抱きたいか?」


「お父さん。アンドロイドは、機械です。電気と交わるなんて、感電しそうだ……」


ガンッ!!


父の気持ちが昂る。


「だが彼女は呼吸をしている! 胸も! 秘部も!

すべてが忠実に再現されているのだ!」


父が湯呑みの置かれたテーブルを、軽く叩きながら訴える。


「父さん、僕には、……アンドロイドとの恋は無理なんです。愛情を持てない」


すると、父さんは哀しい目をして口を開く。


「japan0401、星を誘惑しろ。性的にだ……」



「父さん! 待ってッ……」


待ってください……。


日本モデルが、対面の椅子に座り。

製造年月日4月1日は割烹着はそのままに、和服の裾をはだけさせ、すらりとした美しい脚を、片方、僕の場所にあてがい、慰めるようにやさしく、擦る。


「ああっ、待って、とうさん、やめさせてっ」


「星。アンドロイドは『女』だ。お前をその気にさせる、電気信号で動く『生きた性能』だ」


僕の反応を見て何度目かの「学習」をしたJapan0401が、日本人のそれとは思えないほどイタズラに笑い、割烹着を軽く脱ぎ、自らキツく着付けたであろう胸元を少し、露わにする。


「とうさん、ああ、とうさんっ……」


「わたしの名前では無い。『彼女』に名前をつけて、お前が好きにするんだ、星!」


こんな折檻が、僕の。

ディック家では行われていた。


気持ち良さに抗えず、父も途中で部屋から出て、Japan0401は命令を遂行して、僕を籠絡していく。


僕はまだ、本物の女の子を知らない……。

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