再会⑨

 それから数日後。夕食の時間に久しぶりに親父と一緒になった。いつもなら愛人の誰かと夕食をとっている親父だが、今日は家族と飯を食べることにしたらしい。

 

 我が家の食卓に並ぶ料理は、すべて家政婦がやってくれる。おふくろの味なんて知らない。今日のメニューはビーフシチューだ。それに野菜たっぷりサラダと、海鮮のマリネが添えられている。主食は近所の美味しいパン屋のフランスパンだ。

 

 八人掛けのダイニングテーブルの家長席に親父が、親父から見て右隣に母さんが、左隣に俺が座っている。母さんは親父がいるからか、ひたすら食事に向き合っていた。そんな母さんには気にも留めずに、親父は俺だけに視線を流す。

 

「今日、孝人の勉強部屋の打ち合わせに行って来たよ」

「そうでしたか」

 

 どうして親父が夕食を一緒にとっているのだろうと思っていたけれど、この話をするためだったのか。それにしても話が早いな。

 

「そしたらなんと、河原さんのお嬢さんも一緒だったよ」

「えっ」

 

 今、なんて??河原さんのお嬢さんなんて、一人しかいないよな?

 

「いやぁ~。それにしても綺麗なお嬢さんだった。あれなら、河原建設も安泰だな。あの子ならどこにお嫁に出しても恥ずかしくない」

 

 上機嫌にちぎったパンを頬張る親父の顔をまじまじと見た。「どうして親父が美鈴に会えるんだよ?」という気持ちと「これはチャンスかもしれない」という気持ちが綯い交ぜになる。

 

「あれなら、隼人が惚れてしまうのも納得だな」

 

 母さんの耳がぴくりと動いたのを俺は見逃さなかった。

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