再会⑤
親父は「それじゃあ」と言いながら俺の前を素通りして部屋の出入口へと向かった。俺は椅子から腰をあげてそれを見送る。ドアを開けてやると「おやすみ」と親父が出ていったから「おやすみなさい」と返事をして扉をゆっくりと閉めた。
河原建設、か。上手くいったら、美鈴と再会できるかもしれない。口の端がゆるくなったのが、自分でも分かった。
気分が良くなった俺は、珈琲でも飲もうかと思ってリビングへと行くために一階へと降りた。……のが、間違いだった。
「こんばんは」
階段下のホールで親父の愛人と出くわした。こんなに広い家なんだから、こんなタイミングで会わなくてもいいようなものを。
「こんばんは」
わざと明るい笑顔を振りまく。俺なりの鉄壁だ。
「あの……」
「親父なら自分の部屋だと思いますよ。どうぞごゆっくり」
愛人の言葉を遮って言った。あえて冷たく言い放った。愛人の方へは視線もやらず、俺は廊下を進んでリビングへと向かった。
なにか言いたげだった愛人に反吐が出そうだ。一体、俺と何を話すっていうんだ。イカれてる。まあイカれてないと、こうも堂々と正妻の住んでる家に出入りできないよな。
確か名前は
そんなに長く親父と付き合ってなにがいいんだろう。やっぱり金なのだろうか。だからあんなに若くて美人な女が寄ってくるんだろうか。親父もまだまだかっこいいし、男としても現役だ。
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