再会④
笑みを浮かべていた親父の表情が、苦虫を嚙み潰したように渋くなる。なにか分が悪いことがあるらしい。純粋に俺のためというわけじゃなさそうだ。
「いや、な。まあ、河原建設に注文しようと考えている」
なるほど。そういうことなら合点がいく。
「この前、どうしてもお金を受け取ってくれなかったもんでね。ただ河原建設はこの辺じゃ有名な会社だからな。嫌われるわけにはいかんのだよ」
「そういうことでしたか。兄貴の尻拭いは大変ですね」
明確な嫌味のつもりで言った。父さんがどう捉えるかは知らない。
「尻拭い、か。でもそれくらいしかあの子にしてやれることがない。本当に不憫な思いをさせてしまっているからな。お前と違って問題児に育ってしまったし。親としてのせめてもの償いだ」
親父はゆっくりと腰を上げると、窓際へと移動した。そして、カーテンの隙間から外を眺める。夜半だから明るい室内から外は見にくいだろうが、窓ガラスに写った親父の表情は、目を細めていた。
親父の中で俺はどういう存在なんだろうか。正妻の息子の俺はほったらかしかよ、とは思う。
まあ、この人には俺が跡継ぎにしか見えていないってことは、よく分かっているつもりだ。よく分かっているつもりだが、面白くはない。
「孝人が大学卒業するくらいまで、隼人にはイギリスに居てもらうつもりだ。隼人がいなくて寂しいかもしれないが、しっかり勉強しろよ」
寂しいだと?この親父の目はどうなってるんだ。まさか俺と兄貴が仲良しにでも見えていたのか?
「それじゃあ勉強部屋の件、河原建設に頼んでおくから、しっかり勉強頑張るんだぞ」
「はい。ありがとうございます」
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