再会②
「兄貴こそ」
こいつを兄貴だとは微塵も思ってもいないが、身の上はこいつの責任なんかではないから、存在だけは認めているという意味で一応そう呼んでいる。
「あぁ。これから河原の家に遊びに行くんだよ。だからちょっと準備のためにな」
嬉しそうにそう言った。その笑顔が気色悪い。外見は親父の見た目を引いているからか、俺と同じでそれなりに整ってはいるものの、立ち振る舞いが下品なのだ。
「へぇ。兄貴だけ?」
「いや、友達何人かと」
「へえ。なんでそんなに嬉しそうなの?」
「あわよくば河原の妹に会えるからな。めっちゃ可愛いらしいじゃん。俺、狙おうかと思って」
女好きのこいつから、美鈴がそういう目で見られるかもしれないと思うと、無性に腹が立った。なんでこんなやつに美鈴が狙われないといけないんだ。
「へぇ。兄貴はまだ河原美鈴に手ぇつけてなかったんだ」
俺や美鈴とは比べ物にならないくらい遊び人のこいつには効く一言だと思う。
「は?
「俺はもう寝たよ?それも公園で」
「……ふーん」
俺の方がお前なんかより美鈴に近い存在なんだってことを示したかっただけだった。でも、それがもっと美鈴へと興味をもたせてしまうことは、よく考えれば分かることだった。
それから三ヶ月後。兄貴は高校を退学になって、イギリスに留学という名目で日本から追い出された。兄貴が美鈴を襲ったのだ。わいせつ未遂だ。
幸い、河原家側の要望で警察沙汰にしないで欲しいとのことだったから、大事にはならなかった。でも、人の口に戸は立てられない。柏木家の顔は泥が塗られた。
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