出会い⑭

「それは……」

 

 確かに康介の言う通りだ。こんなに美鈴のことが頭から離れないなら、会いに行けばいいし、口説けばいい。だけど、どうしても引っかかることがある。

 

「アイツには好きなヤツが居るんだよ」

「えっ」

 

 大きな声で驚く康介を、ジト目で睨む。

 

「なんだよ」

「いや。孝人って本気で恋したら臆病になっちゃうタイプだったわけ?意外なんだけど」

「うるせえ」

 

 臆病と言われれば、臆病なのかもしれない。

 

「でもそのまま片思いってのも、お前らしくないけどなあ」

「このままでいるつもりもねえよ。もし、次、また偶然に街で会うことがあったら、アイツは俺と一緒になる運命だったと思って力づくでも俺のモノにしてやるよ。でも会うことがなかったら……。俺たちの運命はそれまでってだけだ」

「なんだ。ロマンチストだったわけだ」

「うるせえ」

 

 ロマンチストにでもなってしまうに決まってる。あの夜が神秘的だっただけに。あまりにも美鈴が美しかった。

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