出会い⑤
「あ~孝人!なんてことしてくれんだよぉ。今日は俺が香織ちゃんの相手してもらう予定だったのに」
その場にいた夜の友人の一人が残念そうに声をあげた。
「それならアイツのこと追いかけたら?今ならすぐにホテル行ってくれるんじゃね?」
「たしかに。じゃあ行って来ようかな」
友人はにやりと口端をあげると、今にもスキップでもしそうな勢いで店を出て行った。香織のどこがいいのか分からない。
香織が腹を立ててその場から離れたせいで、その場に気まずい空気が流れる。集っていたメンツはなんとなく店の中で散り散りになった。
心臓をどんどんと叩くようなBGMが店内を包んでいる。店のどこかしこで若い男女が頬を寄せ合いながら話をしている。この中で心から楽しんでいるやつなんているんだろうか?溜め息を一つ吐いてカウンターに腰かけた。近づいてきた店員にコーラを頼む。
「あんた、ひどいヤツなんだね」
気づくと隣に美鈴が座っていた。
「どっちが」
頬杖をついて、ゆっくりと美鈴へと視線を流す。
「あんたも大変だねぇ。あんな女に好かれて」
妖しく笑う美鈴は艶っぽい。暗い照明のせいだろうか。
「相手にしてないからいいんだよ。それより。なんであんなこと、香織に言ったんだよ」
目の前にコーラが運ばれてくる。すると、すっと美鈴の左手が伸びてきて、それを横取りされた。カラン、と氷の音がする。
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