出会い④
「は?」
香織の着火剤に点火するには十分な煽りだ。眉間に皺を寄せ、鬼のような形相となった香織の口から出た声色に、周りがシンと静まる。あれだけがやがやとうるさかったのに。
おいおいやめてくれよ。河原美鈴も所詮、ただの女か。俺の微笑みは効いていたみたいだ。言い知れない高揚感ににやりと口端があがる。
「あんた、もう一回言ってみなさいよ」
「彼女でもないのに結構うざいね」
間髪入れずにそっくりそのまま言い返しやがった。
「彼女候補だって言ってんでしょ」
とがった爪がキリキリと俺の腕に食い込む。結構痛い。
「そうなの?どっちでもいいけどイチャイチャすんなら早くホテルに行けばいいのにって思って」
ん?コイツ、俺と香織にホテルに行けって言ってんのか?香織にヤキモチを妬いてるわけじゃないのか?
「あんた、私のこと馬鹿にしてんの?」
「馬鹿にしてるわけじゃないよ。彼女候補だって言うんなら、さっさと彼女になって抱いてもらえばいいじゃんって思っただけ」
香織はとがった爪を、俺の腕から河原美鈴に標的を変えた。振りあがった腕を咄嗟に掴む。
「そこらへんにしとけよ、香織」
「なによ!!止めないでよ!!」
「やめとけ。みっともないぞ」
羞恥で赤面した香織は俺の腕を振り払うと、店から出ていった。
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