出会い②

「あの河原千晶の妹だよ。河原美鈴みすず

 

 友人がその女の名前を紹介すると、女の眉がぴくりと動いた。「へえ。こいつが」と思った。河原千晶の妹のことなら、俺の耳にもしっかりと届いていた。男好きで誰とでも寝る遊び人だって。

 

「初めまして」

 

 いつものように微笑みかける。あの河原千晶の妹がどんな反応を示すのか大いに興味がある。

 

「……」

「よろしく」

「……」

「なんか飲む?」

「……」

 

 俺の声なんか聞こえなかったとでもいうかのように、河原美鈴は唇を開くことはなかった。むしろ無反応。男好きなわりに、少しも媚びる反応を示さない。

 

「この子、さっきから何にも喋らないんだけどぉ」

 

 そうこうしているうちに香織が河原美鈴にヤキモチを妬きはじめた。無理もないだろう。香織よりも河原美鈴の方が色気があるのは、火を見るよりも明らかだ。

 

「あんた、いくつ?」

 

 俺と同じ年くらいには見えるけど。

 

「中三。てか。あんたさっきから話しかけてくるけど名前は?」

 

 この俺のことを知らないだと?

 

「柏木孝人。美鈴より一つ年上の高一だよ」

「へぇ」

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