第2章 出会い
出会い①
月の綺麗な夜だった。外灯の明かりがなくても、人の顔が分かるくらいに明るい夜だった。夜の友人の一人が、面白い女を連れて来るから楽しみにしてろという連絡を寄越した。
面白い女と聞いても、皆目見当もつかなかった。でも、エスカレーター式で高等部に進級し、ちょうどマンネリを感じていた頃だった。その面白い女とやらが暇つぶしにでもなればいいかと思って、いつもの溜まり場へと足を向けた。
夜な夜な俺が溜まり場にしていたのは、親父が経営している飲食店だ。親への反発で夜遊びしているくせに、結局親の庇護下で遊んでいる。でも自分の将来のことを考えたらそうするしかない。
「孝人!こっち!」
髪を金髪に染めて、鼻にピアスをあけている夜の友人が俺を呼ぶ。もう何人かが集まっていて、少し酒を飲んでいるみたいだった。
こういう席でも俺は酒や煙草に手を出すことはない。そんなことで自分の将来を潰すのはまっぴらごめんだからだ。
「悪い、遅くなったな。それより、面白い女って誰だよ。香織とか言ったら本当にぶん殴るぞ」
「なにそれ!私も充分面白いじゃん!」
輪の中には香織もいた。今日も元気に胸を強調したチューブトップを着ている。俺以外の男たちはその胸元に釘付けだ。
「違うよ。もっと面白い女に決まってるだろ」
夜の友人はそう言うと、そいつの脇にいた一人の小柄な女の腕を軽く引き寄せると、俺の目の前に差し出した。その女は整った顔を歪ませた。
「へぇ。こいつのどこが面白いわけ?」
なぜだかその女に釘付けになる。俺を睨み上げる瞳なんて気にならないほどだ。
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