女②
俺が初めて女遊びを覚えたのは十二歳。突然、自分に兄貴ができたときだった。いや。正確には兄貴と俺は腹違いの兄弟だからずっと兄貴だったわけだが、俺がその存在を知り、一緒に暮らし始めたのがちょうどその時だった。
その時のショックは、今でもはっきり覚えている。親父が不倫をしていたということと、母親が兄貴という存在を我が家に受け入れたこと。「俺の」家の崩壊の始まりだった。
親父の経営する柏木グループは、地元じゃ有名な企業だ。地元のどの家よりも断然大きくて、お手伝いさんが何人も居る。俺の一つ年上の兄貴である
兄貴はすでに狂っていた。そんな兄貴から、俺は女遊びを教わった。そうしていないと、自分を保っていられなかった。家のために勉強だけはしっかりやったが、中学の頃から夜の街へと遊びに繰り出していた。
女と遊ぶときはいつも少し年上の人。夜の街では柄の悪い連中ともつるんだ。だけど俺は、兄貴ほど馬鹿じゃないから、夜とプライベートは完全に分けて、夜のヤツらとは夜だけの付き合いしかなかった。
要領だけはいいから、夜遊びしても成績を落とすことはなかった。だからか、両親は俺が遊んでいることを知っていたはずだが、何も文句は言われなかった。その代わりに跡取りの心得について耳にたこができそうなほど言われていた。
家が窮屈だ。どこかでストレスを発散しないとやってられない。それもこれも、兄貴が我が家に来てからのことだ。
俺たちは「柏木兄弟」として夜の街では有名だった。顔を合わせていなくても、兄貴の話はどこからでも耳に入ってくる。きっと兄貴もそうだっただろう。親父にも兄貴にも似たくないと思っているが、女好きなのは親父譲りなのかもしれないと思う。
派手好きの兄貴は髪の色をくるくる変えて家の者を驚かせていたけど、俺は学校の校則もあるし派手にするのは嫌いだ。夜遊び仲間では珍しく黒髪のままだ。それが良いと口説いてくる女もいて都合がよかった。
兄貴は自分が一番じゃないと気に入らない人だった。人一倍喧嘩っ早く、誰がどこからどう見ても典型的な問題児だった。
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