女③

 そんな兄貴がライバル視していたのが「河原千晶かわはらちあき」だった。兄貴と同級生で、どこにいても目立つ存在だ。顔立ちがずば抜けているのはもちろんのこと、とにかくオーラがある。

 

 どこで遊んでいても河原千晶の話を聞かないことはなかった。兄貴はそれが悔しかったらしい。河原千晶に近づいて、その鼻を明かすことを今か今かと企んでいたのだ。

 

「ねえ、孝人。あたしとエッチしようよ」

 

 夜遊びを繰り返していたら、色んなヤツと知り合いになる。この女、松井香織まついかおりもその一人だった。俺が言うのもなんだが、俺と同じ年の中学生のくせに色気だけはある女だ。そこら辺の中学生の中じゃ可愛さは一番だろうし、男だったら一度はこいつと寝てみたいと思うほどの体つきだ。

 

 香織自身それを理解しているのか、男を誘うような胸の谷間を強調した洋服を着ている。スカートだってお尻の形が分かるほどピッチピチで短い。

 

「嫌だよ」

「えー。そうやっていつも断るじゃん。いつになったら、私とエッチしてくれるの?」

 

 香織は会うたびに、俺に誘い文句をかけてくる。その誘いに応じたことはただの一度もない。確かに香織は妖艶だ。だけど同級生になんの魅力も感じない。同じ年のヤツとしたって、物足りないだけだ。

 

「お前がもっと、数こなしたらじゃね?どっちにしろ、今のお前とヤッても物足りねぇし」

「そんなのヤッてみなきゃ分かんないじゃない~」

 

 香織はそう言いながら、俺の腕に絡んで来た。意図的に胸を押し付けてくる。普通の男子中学生なら、これだけで応じるものだろう。

 

「言っとくけど俺、すごいよ?」

「っ!」

 

 そんな香織をいなすために怪しく微笑みかけてみた。たったそれだけで香織は赤面する。……これは当分、香織とはできないな。

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