第12話 実は個性があるふぇありーちゃんたち


「イモうまいなのー」

「この美味さはどこから来てるありー」

「もっと植えるふぇあー」


 引き続きイモを食べるふぇありーちゃんたち。


 彼女らだが少しだけ三者三様の個性があるように思える。


 まずわかりやすいのは語尾だ。なの、ありー、ふぇあと三人とも言葉の語尾が違う。


 ……彼女らの名前がないのは不便なので、勝手に【なのちゃん】、【ありーちゃん】、【ふぇあちゃん】と名付けることにする。


 三人そろって【ふぇありーなの】だ。


「これからも食べたいなのー」

「もっと美味しくするにはどうすればいいありー?」

「畑を広げるふぇあー」


 次に行動力。全員まったりしているのだが、その中で少しだけ差異が出ている。


 なのちゃんはまったりであまり積極的には動かない。ありーちゃんは色々なことが気になるようで、少し疑問を持つことが多い気がする。


 ふぇあちゃんは三人の中で最初に行動に移すタイプな雰囲気がある。


「これなら天ぷらはいらないふぇあー」

「そうありー? 僕はどっちも食べたいありー」

「天ぷらも代えがたいなのー」


 今の言動を鑑みると、ふぇあちゃんは革新派、ありーちゃんは普通、なのちゃんは保守派に思えてくる。


 なるほど。今までは三人とも同じと思ってきたが、少し見方を変えるとけっこう違うように見えてきた。


「天ぷらありー。天ぷらこそ正義ありー」

「イモふぇあー。ならば戦いで決着をつけるふぇあー」

「戦いはよくないありー。話し合うありー」


 ふむふむ。ふぇあちゃんは武闘派で、ありーちゃんは弁論派なのかな。


 言いかえるなら武官と文官? いや妖精にそんなものはないだろうけども。


 ただこの話し合いは厄介だぞ。互いに譲らなかったら不毛な言い争いになってしまいそうだ。こういうのはなかなか決着しないんだよね。


 などと考えていると、言い争う二人の間になのちゃんが入ってきて。


「イモで天ぷらしてもらえばいいなのー」

「「それだー」」


 一瞬で解決したようだ。


 問題はまた天ぷらしないとダメなことだが、まあ俺も嫌いじゃないからいいか。


 そんなふぇありーちゃんたちは俺の方に歩いてくると、


「村長ー。次のご飯はイモの天ぷらくださいふぇあー」

「きっと美味しいありー?」

「この答えに僕たちの戦争がかかっているなのー」

「わかったわかった。次はイモの天ぷらにするよ」

「「「やったー」」」


 三人そろって喜んでジャンプするふぇありーちゃんたち。


「あ、村長ー。僕たちに名前をつけてふぇあー。僕はふぇあを希望するふぇあー」

「僕はありーがいいありー」

「なのと名乗らせて欲しいなのー」

「俺が名付けてないけどいいの?」

「セルフサービスなのー」

「以前から語尾を変えてたのはこのためだったふぇあー」


 名前のセルフサービスとは斬新な。まあ俺もそう呼んでたからいいのだけど。


 それに新しいふぇありーちゃんも来そうだし、そろそろ名前がないと不便になりそうだからちょうどいい。


「わかった。じゃあ三人はふぇあちゃん、ありーちゃん、なのちゃんに決定ね」

「ははーなのー」

「たしかに賜りましたありー」

「家名にかけて忠義を尽くしますふぇあー」


 ふぇありーちゃんたちは地面に膝をつけて土下座してくる。


 明らかにお遊びの雰囲気があるので、ちょっと乗ってみようかな。


「うむ、苦しゅうない。これからも余のために尽くすがいい」

「この村長なに言ってるありー?」

「なんで急に偉そうなのー」

「偉ぶりたいお年頃ふぇあー」

「急にハシゴ外すのやめてくれない?」


 三人とも自由過ぎる件。でも可愛いからオッケーです。


「ふぇあちゃん、ありーちゃん、なのちゃん。三人合わせて【ふぇありーなの】だね」

「なに言ってるありー?」

「村長がボケたなのー」

「不老の秘薬を探してくるふぇあー」


 首をかしげるふぇありーちゃんたち。


 不老の秘薬というすごいワードが出てきたがスルーだ。この場所なら伝説のなにかが出て来てもおかしくないし。


「えっとね。ふぇあちゃん、ありーちゃん、なのちゃんの順で名乗ってくれないかな? そうすれば分かるから」

「「「はーい」」」


 ふぇありーなのと分かってもらえないようなので、一度言ってもらおうと思う。そうすれば気づいてくれるはずだ。


 ふぇありーちゃんたちはビシッとポーズを決め始めると、


「ふぇあ!」

「ありー!」

「なの!」

「「「三人そろって! ふぇありーなの!」」」

「……あっ!?」


 しまった。ふぇちゃんとりーちゃんで、【あ】がダブってしまっている。


 言われるまで気づかなかった!?


「うっかり村長なのー」

「返品は受け付けないありー」

「だって僕たち」

「「「三人そろって! ふぇあありーなの!」」」


 そうして数日後。


「三人そろって!」

「「「ふぇあありーなの!」」」

「あら? ふぇありーなのじゃないんですか?」

「村長が名付けたありー」

「ふぇあありーなのー」

「あとで島亀様にも名乗るふぇあー」


 なんかふぇありーちゃんたちのツボにはまったらしく、しばらくこの叫びが連呼された。 


 俺の傷口が塩で恥の上塗りされ続けたのだった。気づいてればりーちゃんにしてたのに……。



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スローライフ作品にしっかりした最終回は不要かなと思うので、ここで完結にさせて頂きます。

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島亀様の背中の上でまったり村づくりスローライフ ~神様から神器を色々もらったので好きに生きたいと思います~ 純クロン @clon

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