第21話「起・心氣の速度と色彩」

 VR空間、仮想世界。

 この世界の神と言っても差し支えないだろう。ゲームマスターヒメとサブゲームマスターサキが速度と流れについての研究をしていた。あと色彩について。

 ――神速の心氣。スパン! スパン! スパン! とキャッチボールをしているが、その速度はありまりにも速すぎた・・・・


 その速度は、普通に生きている人々にとっては当たり前で、小説家にとっては少し物足りなさを感じ、漫画家にとっては速すぎるイメージ、と言った所だろう。

 あとの人達が追いつけるのは、普通の一般市民ぐらいで、俗にう〈軽くて弱い〉威力しか出なかった。

 だが、予約投稿を1日ぶん間を開けて投稿することにより、週刊連載も、月間連載陣も準備ができた。前もって予約投稿の内容を確認できたので、リアルタイムライブ感と違って、ターン制の形が色濃く出たのだった。

 よって起こった現象は、自分のあとの人の工程がしやすくなった、という事である。

 つまり何が言いたいかというと、GM2人は〈速度のコントロール〉が出来始めていたのだった。

「そっか、速すぎたのか。ついでに色も指定されてないからさっぱり判らないと」

「そうなるな、世界は絵で出来ている。そうなるように作られてたんだろうな、何も知らなかった、頂上戦争の時に。先人の知恵は……。現に、お前の動作が速いとか遅いとか、言われたことないだろ?」

 サキは、確かにその通りだ、と思った。

「人より急がなきゃ、て思ってたのかな……?」

 キャッチボールは続く……どんどんゆっくり遅く、取りやすくなってゆく。

「追いつけたのは、本当にライダーかプロぐらいだったんだろうねえ~……」

「まあ、だからこそ絵描けってのも変だけど……、要するにカラーイラストを定期的に描けば良いんだろ?」

「でもそれで効果って発動したっけ……?」

 していない、というより。した感覚がないと言ったほうが良いだろう。実際には〝変化〟はあったはずだ。吸血鬼大戦が強すぎたが故に、世界がソレに順応したのだろう。そのあとの混沌した時期も何とかそれで持ちこたえた。

「ボールというものは手放すリリースしたら制御できない、だが予備動作はコントロールできる、ソコからは手による変化球で決まっちゃうから。要するにリリースする前が大事何じゃろうな」

「これを絵や漫画に応用できれば……いや、出来てれば……」

「むしろ、……2002年から2012年? までは絵に順応して、2013年から2024年までは小説に順応した形が非常に強い。だから例えばソードなアートなオンラインは。アートしてなかったら微妙に動けなかった。という言い方のほうが強いかもしれぬ」

「あとは色……質感か……」

 心氣には〈型〉があるとは設定したが、速度や色彩については設定していない。

「速度は設定しなかったっけ?」

「……した気がするなあ……忘れた」

「むう、じゃあ心氣には速度レベルと色彩指定しないといけないって〈設定〉すれば? そうすれば少しはコントロール出来るんじゃない」

「あー、そうじゃな。色は開拓されてるが。特に速度レベルは0かマイナス1かプラス1かで変わってくる……、ちなみに0がリアルタイムな」

「誰に設定する? やっぱBIG4の4人か?」

「設定してもいいけど、まずGMである自分達で出来なきゃ……」

「あ、そっか……」


 というわけで、〝今回は〟テストフェーズに入った、ちなみに見聞殺しはしていない。プレイヤーも運営もNPCもキャッチボールを見ていて、それぞれ何だ何だと会話をしている。

 ヒメの方にボールが向き、そして発射台に立ったようだ。

「えっと、じゃあまず。心氣の色は〈赤〉、文法型。速度レベル0、リアルタイム制で……一球、ほい!」


 ――神速。ズドン! と、弾道ミサイル級の何かが飛んできた。サキはソレを普通に受け止める。一応、領域の外側だ。

「えっとじゃあ、心氣の色は〈黒〉で、えっと遅いのを知りたいから……、環境型、速度レベルマイナス2ぐらい。1日か2日遅れの球かな~……! えい!」

 言ってサキはジャイロボールを投げた。一泊、ニ泊の間があってから……。


 ――神速。ぽすん! と、ボールがヒメに届いた。一応、領域の外側。

「んじゃ次、問題の一発だ。心氣の色は〈七色〉、速度レベルはプラス2。射程範囲・・・・はアメリカ全土にして、領域の内側・・だ! これで、……どうだ!」


 ――神速。パスン! と、ボールがサキに届いた。サキの右手はヒリリと手の内側が痛くなった。反動コストである。サキにとっては屁でもない。


「終わり、この状態で、えっと一泊間を開けるの?」

「そうなる、ターンエンドじゃな。全王型は流石に今回の実験では投げる気にはなれなかったけど、まあとりあえずこれで様子見。あとは予約投稿した後に、どうなるか、何だよなあ~~~~」

 回りの観客には、何か恐ろしいものを見た目で見られるが。

 変質する前の神業なので。家族の善神と自由の悪神にとっては「?」なのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る