第20話「結・悪者と正義」

現実世界、運営陣、ヴィラン育成計画。

 ゲーム、エレメンタルワールドの会社員が、今日もせっせと働いている……。

「動機や目的は明白だ、悪役が居なければヒーローはヒーロたり得ない。日常系のほほんアニメしか作れない。すると面白くない、売れない、食べていけない。になるんだよ。この数ヶ月で悪役という名の悪の芽は潰されるだけ摘み取られてしまった」

「だから〈闇の秘密結社〉が居るの?」

「そうだ、〈怒りを売る会社〉がイル……〈怒りは金になる〉んだよ」

「でもそれじゃあ自分が〈痛い目〉に合うんじゃないの?」

「そうかもしれない、……だが、〈ネタを皆で温める行為〉は意図的に出来た。次は〈悪の芽を育てる行為〉が必要になる。それが出来なきゃお金は先細り……結局は食べれなくなって死ぬ……。善と悪、己の感情の上下関係を正しく出来なきゃ、いい作品は生まれない。これは自社の繁栄のためにあるんだ!」


 NPCやAIをヴィランにする計画じゃない、そんな半端じゃ読者・消費者は感情移入しない……。つまり、この計画の肝は。

「プレイヤーを、人間をヴィランにする計画……」

「そうだ、悪役ヒールなんて生易しいもんじゃない、本物の悪者ヴィランをプレイヤーの中から育む計画だ……。起承転結は出来た、皆のコントロールは出来た、あとは感情の上下関係を正しく理解し、正しく悪を育み、正しく警察に売る。その娯楽を消費者は楽しみ、私達は食べられる」

「それがお姉ちゃんの生きる道なの?」

「全部じゃない、私の大切な一部・・だ」


「家族の善神としては、……何だかなぁ~」

「……むう、悪い事だとも解ってる、悪い思想だというのも解ってる。だがこれはただの思想だ、善と悪、両方をちゃんと書いてこそ、ちゃんとした〈好い作品〉に巡り会える。そういう生きる道なんだよ、この世界はな」

「……悪に成りきれない悪役か、お姉ちゃんは……」

「ま、今はな」


 ◇


 所変わって現実世界、学校の保健室。

 第2回エレメンタルマスター、桜愛夜鈴が湘南桃花にナースの如く診断をする。

「痛い! いててててて!?」

「あーダメですね、右目がル○ィ、左目がシャン○スになってます。両方海賊です、流れが悪すぎます、模写をしましょう、重症なのでえんぴつじゃなく、インクで描かないと同等の力加減に成らないのでたぶん相殺できません」

「……ずっと・・・? ずっとそうだったの!?」

ずっと・・・でしたね、流れ的に海軍のコ○ーを書いてから、天下無敵の幸運者、審判者のシ○ナを描けば。まあ少しは楽になると思いますよ? ご飯をインクで描いてもいい感じかもしれませんが、ちょっとソコはわからないですね。まずはコ○ーを模写で投影トレースしましょう。変にアレンジせず、誤魔化さず、ただありのままを写す……」

「そんな! じゃあ作業は!? 投稿は!? 予約投稿のストックが無くなって……! イツツ!」

 桃花の体のピクピクは全然治る気配がない……。これ本当に治るのか? ワ○ンダの技術なら治せるって言ってたけど……?

「落ち着いて、まずはコ○ーだけでもゆっくり描きましょう。海軍があなたの世界に居ません、だからまず、海軍を描きましょう。ゆっくりでもいいからまず絵描いて、でないとこの流れは好転しません」

「ま、マジか、お、おおう。今度こそ解ったぞ! でも本当にソウなのかな?」

「疑問を持つのも、もっともですけど……。えっと、予約投稿の効果で、見聞殺しが、ほぼ100%確定しましたので。まあ、今からだと【2024年7月22日】までに海軍を描いてくれれば、ほぼ100%効果が出ると思います。この1件は、見聞殺しで封殺しておくので、どうぞゆっくり海軍描いて下さい」

 どうやら固有結界『見聞殺し?』でこの回は封殺しておくので、気兼ねなく気遣いなく休んで、どうぞ。とのことだった。

「それで治るの!?」

「それはわかりませんが、少なくとも流れは良くなります。好転し始めると思います。まずは海軍描いて、海軍。話はそこからです」

「お、おう、解った。じゃあまずはちょっと休む……」

「お大事に、ゆっくり描いていってね~~~~」


 で、一晩寝て、海軍と王様と革命軍と新聞記者をインクで描き終わった。

 あとは、【2024年7月22日】まで【結果待ち】となる形となる。

「これで治るのかなあ~? まじで?」

 桃花の疑問は勿論だとは思う、しかし。

「確証はできませんが、今までの流れから言って、ある程度は保証できますね」

「保証ねえ~……」

 その言葉に、若干の実績と信頼があった桃花先生だった。


 闇と光が裏側で暗躍する。

 世界がどこへ行くのかは未だにわからない。

 だが、世界が好転する兆しは確かに視えていた。


「それはそれとして、私もう動いてもいい?」

「……、当分はそこに居てって言ったじゃない……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る