第11話「転・仮想敵」
何かが通った。有無を言わさぬ新幹線のように、それは走り抜けていった。そこにいる虫・動物などお構いなしのように……。せっかく育てて芽が出てきた花達を
〈第三休憩所、憩いの洞窟住居『スヤリ』、ビルド工房拠点〉
「あ、起きた?」
そこに居たのはサキだった。どうやらサキも昔、戦空に似たようなことをやられたらしい。そして一言。
「たぶんアレは、スキルじゃない。普通のパンチ」
「普通のパンチ? それであの銀鎧の男の甲冑も砕けるのか? 有り得ないだろ」
そう、普通だったらありえないのだ。しかし、戦空に理屈は通用しない。
「心氣エネルギーを拳に乗っけて放ったとか?」
「たぶん違う。いくらあの一撃を分析しても答えなんて出ないわよ。理屈じゃない」
「……。もしかして、サキがリタイヤした理由って……」
「……当たらずとも遠からずかな……」
自分より凄い人間が居ることは理解できる、しかしてそれで本当にリタイヤしたかと言うとそれとコレとは話が別な気がする。
「戦空が眼前に立ちはだかったってのは本当。でも、それを支えるだけの技術が私にはなかった……そんな感じかな」
こういう時に経験者が居るとありがたい。
「そう言えば、戦空はお前のビルドはつまらないって言ってたけど、あんま気にしなくて良いわよ。例えば、同じ20%制作中の作品を、途中でつまらない、と言われてもそれは評価とは言わない。料理だって、具材を準備してる最中に、この料理はマズイ、何て言われたって意味ないでしょ? 戦空のアレは、何ていうかカンフル剤みたいな、そういう
料理でいうとピリリと辛い香辛料を混ぜた感じだとサキは言いたいのだろう。
「まあ、落ち込んできたのはそうなんだが。やることが多くなってきたぞ……。①自分のスキルビルド生活。②ナマクラの剣3本をまともな剣にする。③
一回死に戻りして。何か一気にやることが増えたぞ、と思ったビルドであった。
「まあ、せっかく拠点に居るんだし。まずは自分のビルドの鍛錬から初めますか!」 気を取り直して、ビルドはビルドのプレイスタイルに戻るのだった。
「さて、〈
普通に倒すのは無理でも、特化型でビルドすればイケるはずだ……。
「まず、あんだけ強いと強力なスキル持ってないと無理そうだし、そのスキルの元、心氣エネルギーを支える器と言う名の武器の強化も必要そうだが……無いと話にならなそうだが、まずスキルの学習、
ビルドはナレーションを起動して、新しいスキルのイメージを膨らましていく。
「まず、アレ等の攻撃に反応で来なかった……それが問題だ」
《返答。
「オーディンとの打ち合いは、単純に剣と腕の耐久値の違いから、一撃で剣が折れちまったので剣の品質の問題だが。戦空のは違う、あれは〈威圧〉〈反応速度〉そして〈常識外れ〉な理屈を飛び越えた〈何か〉……そこまでは解ってる」
《返答。まず
「まあ、ナレーションにはありがたい言葉を貰ったのだが、生憎今の仮想敵は戦空だ。そこまで
《解答。〈
「戦空は感覚派だが、生憎俺は理論派だ。その反応速度論をスキルとして採用しよう。よし! それを
《〈
「よし、これで少しはマシになった! レベル1なのは不安だが、最初だから仕方がない……。次! 〈威圧〉と〈常識外れ〉への対策だ!」
《返答。威圧とは、威力でおさえつけること。おどしておさえつけること。です》
「押さえつける……てことは抵抗力が強ければ良いのか!」
《はい。抵抗力とは外部からの力をはねかえす力です。よって、〈
「それで決定! あとは〈常識外れ〉と〈何か〉に対する対応か……」
ビルドは楽しみながら、仮想敵に対して想いを巡らせて行く……。
〈
反応速度の測定により反応速度式や理論を求め、その内容を検討・実施・反射速度として応用する。性質上測定してからでないと反応速度論が稼働しないので最初の一度目で反応するのは不可能です。
〈
外部からの威力でおさえつけ・おどしておさえつける時に発生する抵抗力。これらの力を跳ね返す力の度数。
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