第43話 別れと帰国
復興は俺が思っていたよりも早く終わった。まさか次の次の日に終わるとは思ってもいなかった。痛みが引いてベッドから起きた俺を待ち構えていたのはクロア君だった。手をおそるおそる引っ張り、あの戦いがあった砦の中央広場に連れてきた。そこには三国の長達や兵士、砦の住人が集まっていて、広場の周りやここまでの道中の家屋や道路は最低限の復旧が終わっている。クロア君曰く、
「みんなでがんばっ、た。」
とのこと。むふーと効果音が出そうなドヤ顔をしたクロア君の横にいたアイリスさんに詳細を聞くと、
「まだ全ては終わっていないが生活が出来る程度には家や道路を直したんだ。だから我々は引き上げるってこと。ディスブル国の兵士は少し残していくようだがね。あそこまで直しておけば後は自分たちだけで何とかなるさ。」
施しすぎるのも毒だからね、と付け加えられた。
「異国の長達がいたら直せないところもあるし、私達にも予定がある。狼人族は自分たちの体に起きた異変と噂の女探し。ディスブル国への贖罪もね。私たちも国に戻って情報を集めなきゃいけない。一昨日のことを考えると事は重大のようだからね。」
最後に、肉体労働しすぎて疲れたよ、と言って話をしめたアイリスさん。その言葉を聞いて王族の仕事じゃないなと考えた俺の頭は漫画脳なんだろうな。
「では兵士諸君、後は任せたぞ。」
「「「「はっ!!」」」」
「住民の皆も今回は大変だったな。今後このようなことはないと誓おう。物資はまた届ける。何かあれば言うといい。」
「「「「「ありがとうございました!!」」」」」
魔王が声をかけると残る兵士や住民が返事をする。その後見送りを断り砦の門の外に出た。
「ではドルファス殿。我らは行かせていただく。」
狼人族の一団はここで別れるようで別れの挨拶を始めた。
「ルプス殿、これからはよろしく頼む。」
「それはこちらこそだ。なにより我らに贖罪のチャンスをくれたこと。感謝してもしきれない!」
そう言うと深く頭を下げるルプスさんとそれに続く狼人族の人達。
「これからは同盟関係なのだ。気軽に連絡を取り合おう。」
「ああ!では!!」
その一言を気に狼人族が狼人族が振り返り歩き出す。ルプスさんを中心に陣形を組んで歩き出した。と、その集団から人影が一つ抜け出し、こちらにやってきた。
「レイト殿。この度はありがとうございました。」
さっきの挨拶よりも深く頭を下げるザーガさんに慌てて礼を返す。
「いえいえ!大変でしたけど皆さんが無事でよかったです。」
「あなたは本当に優しいのですね。我らが聞く人間とは全く違うようだ。近くに来ることがあればぜひ我らの国に寄ってください。精一杯のもてなしをさせていただきます。」
「...はい。その時はぜひ。」
一昨日のやり取りで断ったり、謙遜するのも失礼だと学んだのでザーガさんの言葉をしっかりと受け止めることにした。後ろにいるアイリスは満足そうだ。ザーガさんは狼人族の隊列に戻っていき、ある程度遠くまで歩いて森に入る手前で走り出し、森の中に消えていった。
「よし!ではディスブル城に戻るぞ!!」
「...歩いて帰るんですか?」
「歩きながら隊列を組んでそこからは身体強化魔法で走り始めます。あなたは私のそばにいてください。」
周りが走り始めたので慌てて足に魔力を溜める。マスターが言った通り魔力をためるのがスムーズになっているのを感じる。魔力に慣れてきたことを実感しながら隊列に入っていく。
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