第15話 班長と研究

「マスター。」


「なんですか?」


「青い竜人族の人の話は何だったんです?話は終わったって言ってましたけど?」


「ここでする話ではありませんね。ついてきてください。」


マスターの後ろをついていくこと10分。この国の基準からみても少し大きい扉の前についた。


(そういえば、この世界にも時計ってあるんだな。当たり前にあるから不思議に思わなかったけど。)


マスターがノックをすると、赤い鱗の竜人族の人が出てきた。


「あー、サリヤさまー。どうもー。」


厳つい風貌とは裏腹にふわふわしたしゃべり方の人だ。


「彼女はトーラスさん。アルムン国の研究班の班長です。」


「はじめましてー。あなたが噂の人間さんですねー?」


「はい。玲斗です。よろしくお願いします。」


竜人族の人と初めて握手をしたけど、結構柔らかい。と思いつつ手を離そうとしても相手が離してくれない。


「にぎにぎ。」


「あのー」


「使い魔として召喚された人間さんなんてー。しかも短い間に二人もー。」


「はぁ。」


「こほん。トーラスさん。」


握手を続けようとするトーラスさんを止めるマスター。


「血の解析が進んだと連絡を受けたのですが。」


「あぁー、そうでしたー。」


握手を解いて中に招き入れられる。中はそこまで広くなかった。というか物が乱雑に置かれていて、部屋の大きさ以下の広さに感じる。


「研究班なのに一人部屋なんですね。」


「はいー。一応班長なのでー、特別待遇ですー。」


「すごいんですね。」


「いやー、好きなことをしているだけなのでー。」


「はぁ。トーラスさん。」


「はーい。来てもらったのはー、血の解析がちょっとだけー、進んだからですー。これをどうぞー。」


トーラスさんから渡されたのは小さな水晶だった。


「???」


横を見るとマスターの水晶が板のように変わっていた。


「え?」


呆けているとトーラスさんが俺の手ごと握ってきた。


「すいませんー。これは《マジックシート》って言ってー、魔力を込めると紙みたいになるんですー。」


トーラスさんの手から何か圧、多分魔力が流れてきたと思ったら、水晶が板に変わり、文字や図形が書かれていた。


「おお!」


「これはトーラスさんが開発したものなんですよ。紙に代わるものとして期待の一品です。」


「それほどでもー。でー、解析結果なんですけどー。」


二人がマジックシートに目を向けたので見てみる。が、


(読めない...)


そういえば何度かこの世界の文字を目にしたけど、全くわかんなかったな。英語とかそういう問題じゃなくて、象形文字みたいというか、俺からしたら記号みたいというか。


(あれ?じゃあ何で言葉は同じなんだ?)


「読めますか?」


唸っていると横から声をかけられる。


「あっ、マスターすいません。読めないです。」


「記憶喪失ですからね。しかたないです。」


「あー、やっぱり人間が使い魔になると記憶喪失になるんですねー。」


「というとユカリさんも?」


「はいー。そのようでー。」


あの二人、というかシルビアさんもマスターと同じことを考えていたのかな?


「これを見ると、血が違うのですか?」


「はいー。ゼルシムさんはー、純粋な竜人族なんですけどー。その血にー、人間の血が混じってたんですよー。」


「...そんなことが...」


「純粋な竜人族は100%竜人族の血なんですよねー、もちろんですけどー。でもゼルシムさんの血には人間の血が5%入ってんですよー。」


「...。」


「あのー、」


わけがわからなくなってきたので、手を挙げることにした。


「はいー?」


「血ってそんなにわかりやすいんですか?人間の血とか、竜人族の血とか。」


「わかりやすくはないですけどー、ちょっと分析すれば血の配分はわかるんですー。」


「へー。」


(元の世界でもわかるのかな?)


「でもどうやって混じったのかはまだ不明ですー。っていうか輸血でもしなきゃ血は入らないんですよねー。でも彼が大けがしたことなんてないしー、まずこの国に人間の血とかないしー、わからないことだらけですー。ひとまず今は任務歴とー、外出歴を調べてるとこですー。」


流石に血からどんな人間かはわからないんですよねー、と言うトーラスさん。


(まあ、そりゃあそうか。)


「何か分かったら連絡いたしますー。」


「お願いします。では。」


「ご足労いただきありがとうございましたー。」


パタパタと手を降ってくるトーラスさん。なんか可愛いな。

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