第17話 出撃

「クラウス様! 準備万端です! いつでも出せますよ!」


 翌朝、三人で研究所の地下格納庫に行くと、研究員の皆がそう言って駆け寄ってきた。


「ありがとう、皆。よくやってくれた」


 クラウスが皆を労う。彼らは皆誇らしげにしていた。


「これよりヒュミリスたちを討つ。魔導機兵の情報は漏れていないから、奴らはこちらのことは知らない。だが、これは目立つし、竜は勘がいい。近付けばまず気づかれる。不意打ちは不可能だ。全力でぶつかるのみ。負ければ終わりだ。必ず奴らを倒し、世界を竜の手から取り戻すぞ!」


 パルミラと俺はクラウスの言葉に大きく頷く。ヒュミリスとプルケラ、二匹の竜を倒す、か。計算上、魔導機兵の力は竜に届くことになっているけれど、それが本当かはやってみなくては分からない。とにかく、やるしかない。

 竜に人の力が通用するのだと、証明しなければ。

 俺たちは魔導機兵に乗り込んだ。まずは体にコードを繋ぐ。そして計器類を確認する。異常はない。飛行用燃料のゲージもいっぱいになっている。


「じゃあ、出撃してもらいます。天井のハッチを開けますから、そうしたらパルミラ様、クラウス様、ユアンの順で出て下さい」


 研究員がそう言うと、タラップを外し皆を連れてどこかへ向かっていった。暫くして、大きな音と共に天井が開いた。まぶしい光が降り注いでくる。青い空が見える。凄いな、こんな大がかりな仕掛けになっているなんて。

 天井が開くとともに、赤いパルミラ機がふわりと外へ飛び立った。動きが軽い。外へ出すのはこれが初だと言っていたから、彼女だって飛ぶのは初めてのはずだ。でも難なく飛んで見せた。続いて青いクラウス機が危なげなく飛び立つ。

 次は俺、か。足で床を蹴って飛び上がり、背中の飛行ユニットに制御用の魔力を送る。それに応えて飛行ユニットが点火され、そのままぐんぐんと上昇していく。


「ユアン、上手いじゃないか!」


 パルミラがそう叫ぶのが聞こえた。今は距離が近いからギリギリ聞こえたけれど、飛び始めたら無理だな。通信はライトで行うんだっけ。


「ありがとう」


 そう言いつつ、ライトも使ってみる。


「全員、飛ぶことは出来たようだな。では、ヤラ高原へ向かうぞ。パルミラ、先導しろ」

「了解」


 短く答えてパルミラが飛ぶ。そのすぐ後に俺が続き、最後尾がクラウスだ。本当は防御力の高い俺が先頭の方が良いのだけど、道が覚束ないのだ。近くに着いたら前に出よう。

 なるべく下に何もないところを飛んでいるけれど、時折近隣の畑で農作業をしている人たちがなんだなんだとこちらを見上げて慌てているのが目の端に映る。きっと今日の終わりには各地で目撃情報が噂されるのだろうが、そんな事はどうでもいい。すぐに竜が倒された、というニュースに上書きされるだろうから。いや、そうしなければならないのだ。

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