第35話 隠し事
「ん、んん……」
「お、目が覚めたか?」
この声は……ルーネス? なんでアタシの部屋に――
「っ!! ふぃ、フィルゼは!? 戦いはっ!?」
「落ち着け、まずは水でも飲んだらどうだ」
「そんなこと……ゴホッ、ゴホッ!」
勢いよく咽せてしまった。
ルーネスから水を受け取り、一気に飲み干す。
「ん……ん……プハァ!」
「いい飲みっぷりだ」
「はぁ……それで、戦いはどうなったの?」
水を飲み、落ち着いたことで、少し頭の整理ができた。
アタシがベッドの上にいるってことは、もう戦いは終わっているのよね。
「ああ、まずはどこから話したものか……」
ルーネスの話によると、まず、アタシはあれから3日間も寝ていたらしい。
戦闘での疲労と、魔力の使いすぎが理由って言うけど……まあ、1日に不死鳥を何度も生み出すなんて、初めてだったものね。
あと、アタシが眠っている間に、トリングス先輩やレオナ先輩、イリーナもお見舞いに来てたらしい。
話を聞くと、どうやら皆んなも魔人や、
イリーナはリルに守られて、先輩方は部員たちを守って……なんとか無事で済んだみたいで良かったわ。
いや、そんなことよりも、アタシが聞きたいのは――
「フィルゼは……どうなったの?」
「ああ、フィルゼなんだが……」
そういい、ルーネスは壁に立てかけていた刀を手に取る。
「こいつで斬った」
「そう……なのね」
あれは、もはや人間ではなかった。
殺すのは仕方のないこと、仕方のないこと……だけど。
「……ごめんね。アタシが弱いばっかりに、ルーネスにそれを任せて」
「ん? ああ、気にするな。それで、フィルゼはその後、事情聴取を受けて――」
そうか、やっぱりあんなことをしたんだし、事情聴取くら……い……ん?
「え、ちょっと待って。事情聴取?」
「ああ、意識を取り戻した後、国家機関の連中が――」
「え、え、え? フィルゼ、生きてるの?」
斬られたんでしょ? さっきの雰囲気的にも、死んだとばかり思ってたんだけど?
「あー、そうだ、説明不足だったな」
ルーネスの話によると。
悪魔の魔力によって、人間が魔人になる。
そして、その魔力は魂に宿る。
ルーネスが持っていた刀は、銘を『
それは、相手の肉体ではなく『魂』を切り裂く、というものだった。
本来は相手を気絶をさせたり、ゴースト系のモンスターを倒すための力らしいけど、今回は魂の定着していた『悪魔の魔力』だけを狙って斬ったらしい。
……いや、目に見えない魂を狙うってなに?
「まあ、完全に切り分けることは出来なかったんだがな」
「え、それじゃあ、まだ魔人のままなんじゃ……」
「いや、魔人化するほどの力は残っていないさ。それに、魔力の核に傷をつけたから、これ以上精神が汚染されることもない」
良かった……それなら、暴れる心配はなさそうね。
「今頃は、投獄されているだろうな」
「そう……あ、そういえば、他の魔人化した取り巻きたちはどうなったの? フィルゼと一緒に投獄されちゃったの?」
「ああ、奴らか……」
そういい、ルーネスは一枚の紙を見せてくる。これは……。
「ジャック、ライグ、カリーナ。以上の3名を無期限の停学処分とする……?」
「ああ、やつらは、魔人フィルゼの力で洗脳されていて、今回のことは操られている状態だったし、その時の記憶がない」
「え、でも……」
「それが、フィルゼが、俺に頭を下げてまで頼んだことだ」
フィルゼが……?
「俺も驚いたよ……『彼らは私について来ただけだ。どうか私の首一つで見逃してはくれないか』って……プライドが高いアイツが、懇願してきた時はな」
「そっか……案外、仲間思いだったのね」
「まあ、それで納得するような仲間じゃなかったみたいだけどな」
え、どういうこと?
「アイツら、『いつかフィルゼ様が解放された時に、フィルゼ様を守れるくらいの力を身につけなければなりません』って言って、修行の旅に出たんだよ」
「修行の旅って……」
「いいじゃないか。そういう熱いやつ、俺は好きだぞ」
そう告げるルーネスの顔は、少しワクワクした様子だった。
「……ま、いいと思うわよ。アタシもそういうの、嫌いじゃないわ」
「だろう? もしかしたら、面白い『現代魔法』を覚えて戻って来るかもしれないと思ううと、ワクワクするな」
『現代魔法』……か。
「……ねぇ、ルーネス」
「ん? なんだ」
「……アタシに隠してることあるでしょ」
「っ……」
ルーネスは、少し眉を上げて、こちらを見つめる。
前から、ルーネスの言動には、違和感があった。
教科書にも載っていない、誰も知らないような知識。馬鹿げた魔法力。
明らかに、『普通』じゃない。
自分で言うのはなんだけど、アタシの実力も、知識も、決して低くない。
そのアタシが、ルーネスのことが計り知れない。
「アンタは――何者なの?」
「……ま、隠しておくのも限界、か」
アタシの質問に、観念した様子で、ルーネスが語り始める――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます